相撲界の秘密主義、暴力に「それでもなり手がいると?」海外から先行きを憂う声
かねてから騒がれていた暴行事件を受けて12月1日、横綱だった日馬富士が引退した。相撲の注目度は英語圏でも高く、今回の暴行事件は大々的に報じられている。「日本最古のスポーツ」の行く末を案ずる声もある。
◆日本の伝統技と影
英紙テレグラフは相撲について、「その静穏さと日本文化との深い関連性で愛されている」、「儀式的な」、「日本最古のスポーツ」と説明している。
英国公共放送のBBCも日馬富士の暴行事件を受けて長い記事を掲載し、力士の生活や報酬といった背景説明なども含め事細かに報道している。相撲は単なるスポーツではなく、歴史に根ざした過去や、日本人でいるとは何を意味するのかを垣間見ることができる儀式だ、と説明。土俵際では勝ちも負けも同じ冷静さをもって扱われること、日常でも力士は品格を持って謙虚でなければならないことなどに触れ、相撲が単なる「レスリング」(相撲は英語で「sumo wrestling」と呼ばれる)ではないことを強調する。
その一方で、相撲にはこれまで、「影」の部分がつきまとっていたことも各紙は取り上げている。英紙ガーディアンは2007年に起きた時津風部屋の序ノ口力士の死亡事件に触れ、10年経った今でも暴力を完全になくすことができない相撲関係組織に批判が集まっている、と伝えている。前述のテレグラフも、相撲にはここ数年いじめや暴力、八百長や暴力団との関係などの話がつきまとっており、なかなか悪い評判をぬぐい切れない、と指摘する。
◆秘密主義、暴力……
前述のBBCは、角界の秘密主義的なあり方や相撲部屋での厳しい上下関係に触れ、「相撲界はそれでも、若い人たちが今後も入門し続けてくれると思っているのだろうか?」と疑問を投げかける。同記事では力士の収入にも触れており、トップの力士ではスポンサー料含め月6万ドル(約675万円)程度とし、野球やサッカーの方が暴力の危険性もなくよりたくさん稼げる、と指摘。このままでは、相撲をしたいという若者が減るのではないかと懸念している。
また前述のガーディアンは、日本のメディアが一斉に日馬富士と相撲関係組織を糾弾し、ファンが相撲から離れてしまいかねないと警告している、と伝えている。
◆「日本の国技は生き残れるのか?」
今年1月25日、19年ぶりの日本出身力士の誕生で国内が沸いていたその頃、CNNは「日本の国技は生き残れるのか?」という見出しで記事を掲載していた。日馬富士による暴行事件で今回のような騒ぎになるずっと前だ。記事では、若い人たちが相撲自体に興味を失いつつあることや、外国出身力士が強く日本出身力士が活躍できていないこと、野球やサッカーといった人気スポーツと観客を奪い合っていることなどを挙げ、21世紀でも相撲は自身の足場を見つけられるのだろうか、と疑問を投げかけている。
11月中旬から連日報道陣が詰めかけて異様な雰囲気の国技館だったが、今は報道陣の姿も減り、つかの間の静けさを取り戻している。1月場所が始まる来月には、また普段の活気が戻ってくるだろう。場所中は、休日にもなると国技館には文字どおり老若男女が足を運ぶ。一般的にコンサートやイベント、劇場などは一定の年齢層や性別に偏ることを考えると、まさに国技、国民に愛されるスポーツだと思わせる。世界の注目も集める1500年以上の歴史ある相撲が、今後も栄えることを願うばかりだ。