「2017年を代表する女性」にジジ・ハディッド、ソランジュら グラマー誌
女性たちが大活躍した2017年。米下院議員のマクシーン・ウォーターズ氏、『ウィメンズ・マーチ・オン・ワシントン』(Women’s March on Washington)の中心人物27人、宇宙飛行士のペギー・ウィットソン氏ら、政治、芸能、ファッション、ビジネス、その他諸々の各界から選出されたグラマー誌の『今年を代表する女性たち』(Women of the Year)の顔ぶれからも、それは一目瞭然だ。
11月13日にニューヨークのブルックリンで開催された授賞式に先駆け、10月30日、俳優のニコール・キッドマン氏、歌手のソランジュ・ノウルズ氏、シリア難民のマズーン・メレハン氏、深夜テレビ番組ホストのサマンサ・ビー氏、スーパーモデルのジジ・ハディッド氏、ディオール初の女性クリエイティヴ・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ氏、今年の大ヒット映画『ワンダーウーマン』の監督パティ・ジェンキンス氏らの受賞が発表された。
グラマー誌編集長のシンディ・ライヴ氏は、今年の受賞者たちを、この「女性にとって刺激的な激動の年」を反映する「実に多彩なチェンジメーカー」と評した。受賞者は全員、11月13日夜の授賞式に出席し、同日にチェルシー・クリントン氏、ラバーン・コックス氏、セシル・リチャーズ氏、過去の受賞者たちが参加するサミットが行われている。
今年の受賞者たちは、今後グラマー誌の表紙を飾り、12月号で特集される予定だ。
それでは、2017年の受賞者を一部ご紹介しよう。
◆革命家たち
一般投票で勝利したヒラリー・クリントン氏が選挙人団制度(Electoral College)でドナルド・トランプ氏に敗北した後、特に若い女性たちの力強い声を聞き、グラマー誌は世界中に波及したウィメンズ・マーチの影響力を絶大であると評した。
「予想をはるかに上回る、本当に大勢の女性たちが行進に集まりました。ワシントンのみならず、世界中で」と、先日のAP通信のインタビューでライヴ氏は語った。「組織と各地での行進の計画には何百人もの女性たちが関わっていますが、27人の中心人物は、大統領選挙の日から大統領就任式の日まで寝食を忘れて打ち込みました」。
合計で、20万人という当初の予想を上回る推定50万人がワシントンへ向け行進し、オーストラリアから南極に至る世界各地で500万人以上の参加者が集まった。
受賞者27人は以下のとおり(敬称略)。
ボブ・ブランド、タミカ・D・マロリー、リンダ・サーソア、パオラ・メンドーサ、カルメン・ペレス、サラ・ソフィー・フリッカー、ジャネイ・イングラム、ジニー・サス、エマ・コラム、キャサディ・フェンドレー、リサ・ハープス、ミア・アイヴス=ルーブリー、ラビ・バラー・エルマン、トシ・レーガン、ソフィー・エルマン=ゴーラン、シシー・ローズ、ケイトリン・ライアン、ジェナ・アーノルド、ナンタシャ・ウィリアムズ、アリッサ・クライン、マリアム・エラリ、メレディス・シェパード、タビサ・セイント・バーナード=ジェイコブス、ベレーネ・バトラー、ムリナリニ・チャクラボルティ、ブレア・ベイカー、ディアラ・バレンジャー
◆偉業を成し遂げた女性下院議員
マクシーン・ウォーターズ氏(79)は、「インテリと野良猫」を足して二で割ったようなものだと、グラマー誌で自身について評している。長年にわたり革新派の最前線に立ってきた彼女だが、今夏、財務長官のスティーヴン・マヌーチン氏がトランプ大統領とロシアの金銭的つながりに関する彼女の質問に答えず、彼女に割り当てられた5分を消費しようとしていると思われたそのとき、彼女は「私の時間を返して」(reclaiming my time)と繰り返し主張し、食い下がった。彼女の言葉はハッシュタグになり、女性たちが行動を起こすきっかけとなった。
ウォーターズ氏は、グラマー誌より功労賞(lifetime achievement award)を授与された。
「辛辣な態度で政権と戦う雄弁な彼女は、この一年で多くの若者から注目されるようになりましたが、実は、生涯にわたってとてつもなく感動的な偉業を成し遂げているのです」とライヴ氏。「この女性はあまり裕福ではない家庭で育ち、電話会社に勤務した後、20代で大学に復学する決意をしました。卒業後、ヘッド・スタート(Head Start: 低所得世帯向けの育児支援)のコミュニティ・コーディネーターを務めました。政界に何のコネもありませんでした。彼女は自らの手でキャリアを切り開いたのです」。
◆ファッション界の頂点に立つスーパーモデル
ジジ・ハディッド氏(22)が一躍有名になったのは、リアリティ番組『ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・ビバリーヒルズ』(The Real Housewives of Beverly Hills)だった。3歳ごろからモデルを始めた彼女は、17歳のときゲスのキャンペーンに登場。5年後には、数々の雑誌の表紙や記事にランウェイショーを賑わすスーパーモデルとなった。ファッションブランドのトミー・ヒルフィガーやコスメティックブランドのメイベリンとのコラボレーションも話題だ。
グラマー誌によると、ハディッド氏は単に飛躍しただけではなく、「上り詰めた」のだ。
インスタグラムで3600万人を超えるフォロワーを持つハディッド氏だが、決してこれを無駄にしていない。銃規制について発言し、トランプ大統領が署名したイスラム教7ヶ国からのアメリカへの入国を一時的に禁止する大統領令に抗議して妹のベラ・ハディッド氏とデモに参加するという一面を持っている。
不動産開発業を営む父親のモハメド・ハディッド氏はパレスチナ出身で、母親のヨランダ・ハディッド氏は10代でオランダから移住した。
「ファッションの仕事を始めたころの私は、“典型的なアメリカ人のジジ”といった感じでした。本当に“どこにでもいる普通の女の子”だったんです」と彼女はグラマー誌に語った。「でも、私のインタビューをお読みになれば、いつも両親の文化的背景について話してますよ」。
ライヴ氏は彼女を「この年齢にしてはものすごく賢い」と評している。
◆自分の殻を破るシンガーソングライター
グラミー賞を受賞した傑作アルバム『ア・シート・アット・ザ・テーブル』(A Seat at the Table)で、ソランジュ・ノウルズ氏は己の現実を思う存分に享受している。2016年にリリースされたこのアルバムは、人種差別、文化の盗用、アクティヴィズムとそのエンパワーメントという大きな問題に挑んでいる。
「彼女は、いばらの道を選ぶ人たちにとって、素晴らしく心強い手本です」とライヴ氏。「ビヨンセの妹ですからね。ポップスターになるチャンスはいくらでもあったのに、アートに対する個人的なビジョンに真摯に取り組む道を選んだのです」。
グラマー誌に語ったところによると、ノウルズ氏は同作の製作にのべ3年を費やし、一時期はルイジアナ州のパタウトヴィルという小さな町で地域文化のプライドやレジリエンス、伝統を吸収しながら3カ月間曲作りに集中した。サトウキビ農場の家で作業したことで、祖先を身近に感じ、「常に内省している状態」だったという。
彼女自身の物語を回収し、変えることが目標のひとつだったとノウルズ氏。「私のアルバムで誰が何を書いたか詮索する人たち、記事で私の髪形をとやかく言う編集者たち、私の生活の空間に立ち入る権利があると思っている人たちのために、本当の私を明らかにして発見する必要があったんです」。
By LEANNE ITALIE, New York
Translated by Naoko Nozawa