「日本の病院食、なんてごちそうなんだ」 ある妊婦のSNS画像が海外で話題に
近年は温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに提供されるようになった病院食。しかし、入院中の病院食は味気ないもの、というイメージはやはり先行する。入院患者それぞれの体調、病状などに合わせて計算されているため、味気ないのは仕方ないと諦めるしかない。
しかし出産入院となると、病院食もかなり美味しく工夫されているのが昨今の流行りだ。出産は病気ではないのである程度食材や調理法の自由が利くという訳だ。そしてこの度、日本の妊婦さんが出産入院先の病院で出された病院食をSNSでシェアしたところ、世界中から驚きの声が集まった。
◆男性でも日本で出産したくなった?
様々な写真をシェアできるオンラインサイトImgurにアップされた日本の産婦人科の病院食。そこに集まったコメントを、英国のデイリー・メール紙は「なんてごちそうなんだ!」というタイトルで紹介している。確かに全ての食事は色とりどりで食欲をそそり、退院の日に出される“お祝い膳”は文字通りごちそうだが、海外の病院にはそのようなお祝いの慣習はない。そこで、驚きのコメントが多く集まったという訳だ。
ユーザのコメントには「日本で子どもを産みたい。60歳の男性だけど……」という笑ってしまうものから、「出生率がすごく低いから、戻ってきたいような病院食を提供しているんだろう」という一見日本事情通らしき人、そして、「アメリカの病院で働いているものだけど、私たちが病院で提供している食べ物は(普段の生活で)患者さんが食べ続けた結果ここ(病院)に来る羽目になったものと同じよ」という危機感溢れるものまである。
◆日本の病院食の詳細にいたる配慮
世界の病院食を比べる話題は遡れば多く取り上げられてきた。今回は称賛が集まっているが、日本の通常のソバやお粥の病院食に「気持ち悪い」と批判が集まったこともある。それらの記事の中で、米国のメディアであるNPRの2014年のものが目についた。
2014年当時の日本の病院食についてのコメントが掲載されているもので、イタリアの料理学校の生徒が研修旅行で日本を訪れた時のものだ。見学先の一つである大阪の民間病院のターミナルケア病棟では、毎週患者は自分の食べたいメニューを栄養士に伝えることができ、そこから栄養士ら病院側はどのようにしたらそのメニューが提供できるかを検討するというサービスを行っているという。
その学生は、「日本人は食事を提供する方法に細心の注意を払う」と感じたと話す。彼女は「彩り、質感、量はもちろん、お皿のサイズと寸法に関しても幾つかのルールがあった」と語っている。彩りは食の細い患者さんでも食欲が増すように、皿のサイズは力がうまく入らない手でも持ちやすいように……という配慮からだろう。たとえ美味しいものでも、テイクアウトの白い発泡スチロールの器に入れてしまったら美味しく感じないのは病人も同じである。いや、病人だからこそ、食事の時間くらいは楽しみたいはずである。
◆変わる、病院と病院食のあり方
このような、「病院のおもてなしの心」は入院生活での苦痛を和らげる。裕福層は既にその恩恵を受けており、インドや中国では、なんと5つ星ホテルのような病院があるとか。
自分が提供された病院食を比べるというのは、その病名・病状や各国の医療制度の違いがあるのだからナンセンスであるとは思う。しかし、「美味しい病院食が食べられる産院」というタイトルが躍るマタニティ雑誌は少なくない。少しずつ、病院のあり方も変わってきてるのかも知れない。