◆無表情でないと分からない?
興味深いことにある人の社会階級を当てる能力は、人が感情を表に出さないときにだけ発揮され、笑っているときや感情的になっているときには当てることができないということが明らかになっている。10代後半や青年期にさえ、それまでの人生における感情を表す習慣は、明快に顔に描き出される。
例えば典型的には裕福で満たされた人生を送る者は、幸福が頻繁に訪れることで表情が変わっていくというのだ。研究者によると突発的な感情は、こうした長い間に蓄積されて形成された表情を覆い隠してしまうのだという。つまり人々の素の表情にこそ、それまでの人生経験が凝縮されているということだ。
ニコラス・ルール氏は「我々がなにも感情を表していないと思っているときにさえ、感情の遺物は常にそこに残っています」と指摘している。
◆顔の認識能力は脳の機能の一部
そもそもなぜ人は顔を見ただけで、裕福か貧しいかということを判断できるのだろうか。研究者は人に生得的に備わる脳の機能を要因として挙げている。
「顔の認識に特化したニューロンが脳にはあります。顔とはあなたが誰かを見るときに、一番最初に気付くものなのです」とニコラス・ルール氏は言う。また「我々は雲のなかにも顔を見つけ、トーストされたパンにも顔を見つけます。我々は顔に似た刺激物を探し出すようにできているのです」とも指摘している。人間は、脳の構造からして、顔に対して非常に敏感だということだ。
一目見ただけで、裕福であるか貧しいかが分かってしまうとは、ある意味非常に恐ろしい。もしかしたらあなたも知らぬうちに人からリッチか否かを判定されているのかもしれない。