ダイエット後にリバウンドを起こしてしまう人が多いのはなぜ?

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著:Kenneth McLeodニューヨーク州立大学ビンガムトン校 Entrepreneur in Residence & Director – Clinical Science and Engineering Research Laboratory)

 ダイエットをし、それを維持しようとしたことがある人ならだれでも、その難しさは知っているだろう。ダイエットはとてもシンプルなことのようにも思える。ただ運動をしてカロリーを消費し、カロリー摂取を抑えるだけではないかと。しかし、多くの研究によると、このシンプルな戦略は多くの人にはあまり効果的ではないということが解明されている。

 最近のアメリカ国立衛生研究所の研究が、ダイエットを継続に挑戦した人のめざましい例を示している。その研究所の研究者たちは、「世界で一番のルーザー(World’s Biggest Loser。負け犬という意味のLoserと減らすという意味のLoseをかけている。)」というリアリティ番組の参加者14名を追跡した。番組期間中の30週間の間、参加者は一人当たり約125ポンド(約60キロ)減量した。しかし、番組が終了してから6年後には、運動とダイエットを継続したにも関わらず、一人以外全員がもとの体重をほとんど全て取り戻してしまった

 なぜ減量し、それを維持するのは難しいのか。減量は多くの場合、安静にどれだけのカロリーを消費するかの指標である安静代謝率の低下につながり、体重を維持するのを難しくさせる。それではどうして安静の代謝は減少するのか。そして、安静代謝率を減量後にも平常に保つことはできるのか。これらの質問に、筋骨格生理学を研究している者として答えていきたいと思う。

 足の深層にある筋肉を活性化させることは、血液や体液が体の中を循環するのを助けてくれるため、座っているときや静かに立っているときの安静代謝率に重要である。これらのいわゆるヒラメ筋と呼ばれる筋肉は、私たちビンガムトン大学臨床科学工学研究所の注目する研究課題だ。これらの筋肉は「第二の心臓」としばしば言われるように、血液を心臓に送り返すことで座っているときも平常の代謝が行われるようにする機能がある。

◆安静代謝と体重維持
 安静代謝率(RMR)は身体が活動的でないときの、体内の生化学的な活動すべてに当てはまる。この代謝活動があなたの呼吸と生き続けることを支えている。さらには、大切なことに体温を維持することにも役立っている。

 常温で安静に座っているときの安静代謝率が基準として用いられ、1代謝当量(MET)とされる。ゆっくりと歩くのは2MET、自転車をこぐと4MET、ジョギングは7METとされている。もちろん、日常生活をこなすには少し動き回る必要があるが、現代人はあまり活動的ではない。よって、ほとんどの人にとって、私たちが一日に消費するカロリーの80%は安静代謝によって消費される。

 減量をすると、筋組織を減少させるために安静代謝率は低下する。しかし、減量が脂肪を落とすことで達成されていると、脂肪は代謝に寄与しないため、安静代謝率は少ししか減少しないはずである。驚くべきことは、ダイエットや運動によって脂肪を落とした人の中でも安静代謝率が大きく減少することがしばしばみられるということだ。

 例えば「世界で一番のルーザー」の参加者は減量の80%は脂肪を落としたことによるものだったにも関わらず、安静代謝率は約30%も減少した。単純計算によるとそれだけの安静代謝率の低下を打ち消すには日常生活に加えて毎日一日約2時間の活発なウォーキングを行う必要がある。ほとんどの人がこのレベルの運動を日常生活に組み込むことはできないだろう。

 バランスの取れた食生活と適度な運動が体にいいということは疑う余地もないが、体重管理の面からみると、減らした体重を維持するには安静代謝率を上昇させることがより効果的な方法だろう。

◆心臓と安静代謝率の関係
 代謝は身体の中の組織への酸素運搬に依存する。これは血流によって行われるため、結果的には、代謝は心排出量に最も依存することとなる。

 成人の身体には約4から5リットルもの血液がながれており、これが1分強の時間で身体の中を循環するのである。しかし、心臓がどれだけの血液を送り出せるかはどれだけの血液が心臓に返ってきているかに依存する。

 もしも私たちの「配管」、特に静脈が硬いものであり、脚の皮膚が鳥の脚の皮膚のように硬ければ、心臓からの流出量は流入量と同じになるのだが、そういうわけにはいかない。私たちの静脈はかなり伸縮性があり、定常時の大きさを何倍にもすることができ、我々の皮膚の柔らかさは身体の膨張を可能にする。

 結果的に、私たちが静かに座っているとき、血液と間質液(身体内の全ての細胞を囲っている液体)は身体の下部に溜まっていく。この蓄積が心臓に戻る体液の量を大いに減少させ、同時に、心臓が一回の収縮で送り出せる血液量を減らすのだ。これが安静代謝率を決定づける心排出量を減らすこととなる。

 私たちの研究によって一般的な中年女性の心排出量は、静かに座っているとき 20%も減少することが明らかになった。最近減量した人は皮膚がよりゆったりしているため、体液がたまるためのスペースが大きく、心排出量はより減少する。特に、急速に体重が減少している人は、皮膚がそれに合わせて収縮することがまだできていないため、この傾向が強い。

◆代謝を上げるには
 若くて健康的な人は、ふくらはぎの特殊な筋肉(ヒラメ筋)が血液と間質液を心臓に送り戻すことができるため、座っているときの体液の蓄積は少ない。だからこそヒラメ筋は私たちの「第二の心臓」と呼ばれるのだ。しかし、現代的な体を動かさない生活は、第二の心臓が弱り、体液が大いに身体の下部に溜まることを許すこととなる。これが、一般的に「座り病」といわれるものである。

 さらに、体液が過剰に溜まることは悪循環を引き起こす。体液蓄積は安静代謝率を低下させ、安静代謝率の低下が体内での熱の生成を妨げ、さらなる体温の低下を引き起こす。安静代謝率が低い人々は多くの場合、恒常的に冷え性だ。代謝活動は組織の温度に依存するため、安静代謝率はさらに低下する。1℉(約0.55℃)の体温低下が安静代謝率を7%も低下させるのだ。

 減量後の体液の蓄積を防ぐ、高価だが論理的な解決策は、減量によって作られた余分なスペースをなくすために余分な皮膚を落とす整形手術をすることである。実際に、胃バンディング手術によって体重を減らした人の中でも、体形矯正手術を受けた人はそれを受けなかった人に比べて肥満度指数を長期的に維持する傾向が強かったと最近の研究が明らかにしている。

◆何ができるのか
 減量後に安静代謝率を維持するためのより楽な方法は、私たちの第二の心臓ないしヒラメ筋を鍛えることである。ヒラメ筋は身体の深くにある姿勢筋であるため、長時間のゆったりとしたトレーニングを要する。

 例えば太極拳はこれに効果的であるが、多くの人にとってこれは面倒なようである。

 ここ数年で、ビンガムトン大学臨床科学工学研究所はヒラメ筋を鍛えなおすためのより実用的なアプローチを開発することに尽力してきた。大学のスピンオフ企業で現在購入可能であり、振動によって足つぼを刺激することでヒラメ筋に反射収縮を起こさせる機械は私たちが開発したものだ。

 18歳から65歳までの54人の女性を対象として行った研究によると、24人は第二の心臓が弱く、下肢に体液の過剰蓄積が見られたが、ヒラメ筋を刺激することによってこの蓄積は解消された。体液蓄積を防ぎ、解消し、心排出量を保つ能力は、理論上は座っているときにも安静代謝率を維持することにつながる。

 この仮説は私たちのスピンオフベンチャーが行った行った研究によって部分的に証明された。この未発表の研究は体液蓄積を解消することで心排出量は通常のレベルまで戻せるということが明らかになった。研究結果はまた、静かに座っているときの安静代謝率も、心排出量を元に戻すことによって、通常レベルまで戻すことができるということも示している。これらの結果はまだ検証されていないものだが、より大掛かりな臨床試験が今行われている。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by AnthonyTG

The Conversation

Text by The Conversation