健康チェック:マイクログリーンは通常の野菜より優れている?
著:Duane Mellor(キャンベラ大学 Associate Professor in Nutrition and Dietetics)、Ekavi Georgousopoulou(キャンベラ大学 Research associate)、Nenad Naumovski(キャンベラ大学 Asistant Professor in Food Science and Human Nutrition)
葉物野菜やハーブの小型版ともいえるマイクログリーンは、成育野菜より健康的とされている。そして、値段はやや高い。
それでは実際、マイクログリーンには多くの栄養価が含まれているのだろうか?他にメリットはあるのだろうか?余分な支払いをするだけの価値があるのだろうか?
「野菜の紙吹雪」ともよばれるマイクログリーンの栽培方法は、通常の野菜や他の植物とほぼ同じである。しかしこの植物は、種が蒔かれてから1~3週間、長さが5センチになる前に摘み取られてしまう。
マイクログリーンは、数日のうちに食される稚苗で、通常は水耕栽培されるアルファルファやもやしと混同してはいけない。
多くのマイクログリーンはもともと、シェフがレストランで使用するために栽培されていた。バジル、コリアンダー、チャード、ビートの根、赤紅アマランスの小型版ともいえるこの野菜は当初、料理での風味の補完や付け合わせとして用いられたが、やがて人気が広まった。自家栽培ができるプランターとして購入することさえ可能だ。
2017年3月までに、マイクログリーンに関して報道されたニュース記事は16,000本にも及ぶ。そこでは健康面での利点があるらしいということに加え、子どもたちが多くの野菜を育てたのちそれを食べるのを奨励できること、狭い場所で栽培できることなどが紹介されていた。そのため、都市型生活での料理に加えると役に立つかもしれない。
◆小さいのは良いこと?
25品種のマイクログリーンの栄養価を調査し、成育した葉物野菜やハーブで公表されている成分情報と比較した米国の研究がある。
そこでは、マイクログリーンの品種が違えば栄養価も異なることが明らかにされた。しかし、マイクログリーンは通常、成育野菜と比較してグラム数あたりのビタミンC、ビタミンE、カロチノイド(植物性化合物。一部はビタミンAの生成に、一部は目の健康維持に役立つ)の含有量が多かった。
それでは、栄養が「ものすごく蓄えられた」この葉物は、私たちの食生活をすぐさま改善してくれるのだろうか?
マイクログリーンは明らかに栄養の密度が高いので、普通はビタミンやミネラルが凝縮されていると考えてよいだろう。そして成育野菜と同様、マイクログリーンは低カロリーでもある(米国のデータによると100グラムあたり約120キロジュールまたは29キロカロリー)。オーストラリアでは、マイクログリーンに関する分析は行われていない。
しかし、私たちは違いを出せるほどにこのマイクログリーンを摂取する余裕があるだろうか?例えば、マイクロ赤キャベツには100グラムあたり103ミリグラムものビタミンCが含まれている(同量の成育キャベツは69ミリグラム)。しかし値段を比較すると、マイクロキャベツのほんのひとすくい分で通常のキャベツが半個分購入できることがわかる。
「オーストラリアの健康的な食生活ガイド(Australian Guide to Healthy Eating)」では、1回の食事で約75グラムもしくはカップ1杯分の葉物野菜を摂取するよう推奨しており、私たちは1日あたり最低5品の野菜摂取を目標とすべきだ。そのため、魅力的な付け合わせであるマイクログリーンについて言えば、たくさん購入して家計に負担をかけるか、大多数のオーストラリア人と同じく野菜の十分な摂取ができず、推奨されている5品に届かない状態となるかの、どちらかだろう。
マイクログリーンの栄養価は豊富ではあるものの、「野菜の紙吹雪」という名前が表しているように、野菜や栄養素の総摂取量に対してはおそらくわずかな貢献しか望めない。
◆マイクログリーンには居場所がある
この野菜は、総栄養摂取量に対する貢献度はあまり大きくない可能性はあるものの、私たちの家庭の中で潜在的に居場所がある。とりわけ学校で野菜を栽培すると、子どもたちに多くの野菜の摂取、多様な食事を奨励するのに役立つという実証結果がある。そのため、ただのマスタードやクレスではなくマイクログリーンを栽培すると、次世代の人々により健康的な食事を触発できるかもしれない。
調理的な観点からすると、マイクログリーンの多くはハーブであり、成育間もないとき葉物野菜の品種はそれぞれ違った風味を持つ。甘味が強いもの、辛みが強いものなどがあり、新たな風味が加わることで視覚的に、しかも味覚面でも料理を引き立てることができる。さらに、この小さな植物からもたらされる魅惑的な風味があれば調味料は不要になるので、健康面での副次効果があるかもしれない。間接的ではあるが健康に良いということだ。
マイクログリーンは、数ある食品トレンドの中では最新のものだろう。栄養価がやや豊富な食品という意味で、数字の上でもいくらかメリットがあるかもしれない。しかしこの野菜が持つ本当の価値は、自ら栽培するところにあるようだ。控えめな方法ではあるが、自家栽培をすることで、私たちは食糧供給とつながっていると実感できる。
食糧供給とつながり、「スーパーフード」の流行や栄養価のさらに先に目を向けるに際し、この小さな野菜たちは私たちの台所で大事な位置を占め、食糧はどこからやって来るのかを私たちに思い起こさせてくれる。そして、とりわけ若い人には、新しい食品や風味を試すよう促してくれる。さらには、食糧とつながることで、全体としてもっと健康的な食事をするよう私たちは力を与えられているのかもしれない。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac