「300種類!?」「ケーキ入り!?」日本のキットカット展開に驚く海外の人々

 海外発祥のキットカットだが、世界的には日本で作られたキットカットの人気が高い。抹茶などの王道から、ブルーベリーや珍しいところでは味噌など種類が豊富で、海外で手に入るものとは一味違うと好評だ。最近発表されたケーキ入りキットカットも話題を呼び、海外メディアがこぞって紹介している。

◆海外を驚かせる300種類のバリエーション 発祥国イギリスでも人気
 キットカットのバリエーションは想像以上に豊かで、CNNが「日本のキットカットブーム:300フレーバーを超えるグルメな展開」(5月12日)という記事を組むほどだ。またブルームバーグも、わさび味、紫芋味、さくら風味、日本酒風味などを紹介している。期間・地域限定の商品も含まれるが、300種類という商品展開には海外メディアも舌を巻いているようだ。

 お土産としても人気で、ブルームバーグではドイツから来た旅行者の声を取り上げている。「わさび味を何パックか買ったよ。友達に衝撃を与えるのが待ちきれないね」(7月26日)と興奮を隠さない。見慣れたブランドの全く別バージョンという絶妙なラインが、お土産として受ける秘訣なのだろう。キットカットを生んだイギリスでも、例えば抹茶味のパックはAmazonで4.52〜13.99英ポンド(約660〜2050円)と、日本の実勢価格約300円よりも大幅な高値で売られている。本場での人気も相当高いようだ。

◆ケーキ入りキットカットが新登場 プレミアム路線で新工場の建設も
 国内では7月25日からケーキ入りキットカットが限定販売されているが、海外メディアも早速取り上げている。米ソーシャルメディアでは「ケーキの入ったキットカットは、これまであなたが食べたキットカットの中で一番贅沢」(マッシャブル、7月20日)と題し、発売前から報じる力の入れようだ。

 この商品は「キットカット ショコラトリー ガトーミニョン」と呼ばれ、銀座のフラッグシップストア「キットカット ショコラトリー」で限定販売される。サイズは通常の商品に近いが、3個入りで1,458円とかなりのプレミア感だ。米料理メディア『デリッシュ』も、「ケーキの詰まったキットカット、あなたのダイエットを台無しにするために新登場」と紹介するほか、多数の海外メディアに取り上げられている。

 他にもネスレ日本はプレミアム商品全般を強化するようだ。ブルームバーグによると、同社は姫路に2番目のキットカット工場を新設する。この工場はプレミアム商品に特化したもので、キットカットの生産工場としては26年ぶりの新設となる。日本は観光ブームに乗っており、海外旅行客の需要も見込めるとブルームバーグでは分析している。新工場稼働で、プレミアム路線の商品もより手軽に買えるようになるかもしれない。

◆語呂合わせのマーケティングのほか、日本のギフト文化が後押し
 キットカットの歴史は比較的新しく、CNNは誕生時期を1930年代としている。イギリス北部のヨークで「ラウントリーズ」という地元企業が発売した。長らく無名の時代が続いたが、1980年にスイスの大手企業ネスレに買収されたことから一躍世界に広まったという。

 では、イギリスでなく日本で幅広く展開しているのはなぜだろうか? ブルームバーグが注目するのは、語呂合わせの販売戦略だ。日本では広く知られているように、キットカットは「きっと勝つ」に通じるとして、受験シーズンの願掛けアイテムとしても人気だ。この戦略はCNNも紹介しており、海外から見ると一つの面白い売り方に思えるのかもしれない。

 CNNはほかにも、日本特有の「贈り物文化」が影響していると見る。日本人は旅行帰りや人に会うときなど、さまざまなシーンで手土産を用意することで知られる。記事では同商品を担当するマーケティングマネージャーの言葉を引用し、こうしたお土産文化と日本の美食思考が融合し、売れ行きに貢献しているとしている。確かに地域限定や期間限定のキットカットは話題性もあり、ちょっとした手土産に向きそうだ。

 ふだん意識することはないが、いろいろな味を手軽に楽しめるのは、日本に住むささやかな特権なのかもしれない。

Text by 青葉やまと