テニスの勝敗は試合中の唸り声で決まっている? 英研究
テニスの試合を見るときに観客はどこに注目するだろうか。高速なサーブ、鮮やかなリターンエース、強烈なフォアハンドなどは確かに試合の行く末を暗示させてくれるかもしれない。しかし最新の研究によると、ただ唸り声を聞くだけで試合の結果は分かってしまうのだという。
◆唸り声の音程が勝敗を分ける
イギリスのサセックス大学の研究によれば、テニスの試合中に発された選手の唸り声は、試合に負けたときの方が勝ったときよりも高い声であるという。
研究は同大学の心理学者ジョーダン・レイン氏、哺乳類コミュニケーションの専門家デイビッド・レビィ氏とケシア・ピアンスキ氏らによって行なわれ、世界のトップ30に名を列ねる一流選手を含む50試合がテレビの映像を通して検証された。研究では選手がサーブ、バックハンド、フォアハンドを打つ際の唸り声が計られ、試合の勝敗とともに、どの段階で唸り声が発せられるのかが記録された。
◆試合の序盤から
調査でさらに明らかとなったのは、選手間の唸り声の高低の相違は、試合の序盤から観測できるのだという。つまり唸り声の高低は試合の勝敗が決まるはるか前から表れるということである。
ジョーダン・レイン氏は、唸り声の高さの変化はスコアボードの点差のような短期的な変化ではなく、より長期的な生理的及び心理的な要素に影響されると推測している。それらの要素とは以前の対戦成績、フォーム、世界ランキング、疲労、怪我などだと予想されている。これらの要素が無意識に選手の唸り声の高低につながっており、それにより勝敗も予測できるのだ。
◆テニス選手は皆気づいている?
驚くべきことに、唸り声の高低は科学的分析なしでも判断可能であることが明らかとなっている。テニス選手に他の選手の唸り声を短い映像で見せたところ、他の情報は一切与えられずとも、同じ選手から発せられた2つの唸り声のうちのどちらがその選手が負けたときのものであるかが判断できたのだ。
このことは、テニス選手の唸り声は対戦相手にとっては、その選手の状態を教えてくれる有益な情報源となることを示唆している。哺乳類に関する「声の高さと性的魅力」の関係性についての論文を執筆した経験もあるレビィ氏は「他の哺乳類と同じように、人の唸り声の音響構造も競争の結果について推測するための情報を含んでいる」と述べている。
また「いかにまたなぜ人間は声の高低を使い分けるのか」について研究経験のあるピアンスキ氏は「これからの研究では、攻撃的な吠え声や恐怖の叫び声といった人間の発声が、人間の発声行動の進化に関する更なる手がかりを持っているか明らかにすることが期待される」と述べている。
もし本当に唸り声で勝敗が分かってしまうのならば、これから観客は選手のプレーではなくまず声に注目してみるのがいいだろう。それで試合が始まってすぐに勝敗が分かってしまうのならば、選手にとってはたまったものじゃない。これから唸り声を出すのに慎重になる選手も出てくるのかもしれない。