政治の道具として観光事業 バンクシーのベツレヘムのホテル
◆占領下で客室を占有
壁の抑圧を感じ、イスラエルの監視塔の監視を体験できる場所にホテルを配置することで、宿泊客は占領下に置かれることになる。
豪華スイートルーム(「プレジデンシャルスイートには腐敗した国家元首のためにあらゆるものを完備」)がある一方で、イスラエルの軍用ベッドが備え付けられた一泊30米ドルの格安の客室もある。手頃な価格の宿泊施設には、上流階級のバンクシーアートのファンばかりでなく、より幅広い人々に使ってもらおうという姿勢が現れている。
ウォールド・オフ・ホテルの宿泊客は、数か所の壁や検問所、保安検査場に囲まれる経験をする。そのような経験から共感と洞察が生まれるのだ。
ウォールド・オフ・ホテルでの経験は、海外から訪れる観光客が、占領されたパレスチナの領土に連れてこられたことに気づかないままベツレヘムを訪れる通常の聖地巡礼ツアーとは対照的だ(イスラエルの地図にはこの地がイスラエルから分断された領土として記されておらずイスラエル人が所有する旅行会社が半日ツアーの日程を組むため)。
バンクスキー氏が2015年に英国内に設置したディズマランド同様、同氏のウォール・オフ・ホテルは、ますます不平等、不公平になっている世界の中で宿泊客に自らの選択すべき道と役割を問いかけるよう促している。
観光とレジャーの機会を気ままな目的に使う「覗き見」にすべきなのか。それとも、ウォールド・オフ・ホテルのような場所で他人の経験を肌で感じて擁護し行動を起こす気持ちにさせられるべきなのか。ホテルは政治的関与において有望な空間なのか。また観光事業は現在販売されている現実逃避の利己的な快楽を超えたものに変わることができるのだろうか?
◆観光事業は政治変革の有望な道具?
政治擁護を目的として観光事業を企画し主催する者はその有効性に関心を示している。
キューバ連帯ツアーからメキシコ、チアパスのサパティスタ民族解放軍ツアー、バウエンホテルの宿泊施設(ブエノスアイレスの労働者によって取り戻されたホテル)に至るまで、支持者らはそこで学び、体験するために押し寄せる。
さらに範囲を広げれば、米国を拠点とする人権団体グローバル・エクスチャンジは正義を擁護するために世界を見て回る人権ツアーを提供している。
パレスチナでは、オルターナティブツーリズムグループが「正義を学ぶ観光ツアー」のモデルを作り、観光客が地域の問題に関する人権擁護をパレスチナ人(やイスラエル人)から学ぶのを助けている。
バンクスキーのウォールド・オフ・ホテルは政治的道具としての観光事業の評価を考察するよう促してくれる。パレスチナ人はその主張を聞いてもらうことを望んでおり、バンクスキーは自身の有名なプラットフォームを占領の不当性に注意を惹くために使用している。
ウォールド・オフ・ホテルの客室を占有することで、観光客は現実的なやり方で誰が移動し、誰が移動していないのか、このような状況の中で我々の選択がどのように関わっているかを熟考することができる。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by サンチェスユミエ
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