最高のコーヒーを淹れるための4つのポイント

photo Andy Ciordia/Flickr, CC BY-NC-ND

著:Don Brushettサザンクロス大学 Research Associate)

 ようこそ、「Chemistry of Coffee(コーヒーの科学)」へ。本記事は、世界で最も消費量の多い飲み物である「コーヒー」のおいしさの秘密を紐解いていく。コーヒーの味わいというのは、抽出過程の「変数」を調整することで、大きく変わるものだ。どうすれば繊細で滑らかなコーヒーが淹れられるのか、あるいはどうしたら苦くまずいものになってしまうのか、その違いを見ていこう。

 近頃、まずいコーヒーを出す店に出会わなくなった。エスプレッソの注文を受けたバリスタの多くが細心の注意を払い、微調整を加えながらコーヒーを抽出する。しかし、実は人の手でコントロールできる変数というのはそれほど多くなく、以下の4つに絞られる:

1. 豆の挽き具合
2. 抽出温度
3. 抽出時間
4. 何より重要な、コーヒー豆とお湯の比率

 多くのコーヒー焙煎の専門家やバリスタ養成学校が、お湯の量とコーヒー豆のグラム数の比率、そして濃度や抽出率などを複雑に組み合わせたグラフ作成している。中央に描かれるのは、最高の一杯のための理想的な重さ/量/抽出濃度の目標値だ。

(もちろん、ラテやカプチーノ、カフェオレなどが好きな人もいるだろうが、ミルクが絡むと話が変わってくるので、今回は割愛する。)

 下図は筆者が独自に作成した表だ。この表で4つの変数を動かした場合にコーヒーの味わいがどのように変わるかを説明しよう。

main

横軸が相対的時間、縦軸が量をあらわす数値、そして曲線は成分の抽出状態を示している。

 カフェインは水に溶けやすいため、そのほとんどが早い段階で抽出される。コーヒーに複雑な風味と香りを与える油分は抽出に比較的時間がかかり、コーヒーの苦みの元となる有機酸は、さらにじっくり時間をかけて抽出される。

 次に、4つの変数をそれぞれ見ていこう。

1. 豆の挽き具合
 豆の挽き具合と抽出時間は深く関係している。コーヒー豆は細かく挽くほど表面積が増え、逆に粗挽きにすれば、表面積は小さくなる。

 両極端の例で考えてみよう。まず、コーヒー豆をベビーパウダー並みに細かく挽くと、抽出される粉の表面積は最大になるため、短時間で目的量を抽出することができる。ただ、もう少し時間をかけたほうが好みだという人もいるだろう。

 トルココーヒーの場合、細かく挽いた豆を沸かしたての熱湯を使う。こうして淹れたコーヒーは非常に濃くて苦みが強く、その挽き方ゆえにコーヒーの粉がそのまま浮いていることも多い。粉が非常に細かくフィルターの目に入り込むこともあるため、抽出に時間がかかる、あるいはまったく水がフィルターを通過できない場合もある。

 それでは逆の例として、コーヒー豆を挽かずに豆のまま抽出する場合を考えてみよう。もちろん、十分な時間をかければ、そのままコーヒーを抽出することは可能だ。だたし、お湯が豆の内部にまで浸透しない可能性があるため、これではコーヒー豆の無駄使いだ。したがって、この方法は適切とは言えない。

 このことから、コーヒー豆の最適な挽き方(粗さ)がこの両極端の間のどこかに位置することは間違いない。そして、そこにカフェイン、油分、有機酸の比率が最も理想的となる抽出時間(コーヒーの粉をお湯が通過する時間)を当てはめることで、理想的な1杯が見つかるはずだ。

 もし、上質なコーヒー豆を使っているにもかかわらず、薄くてコクのないコーヒーになってしまうのであれば、挽き方が荒いのかもしれない。逆に、とても飲めないというほど濃いのであれば、細かく挽きすぎて有機酸が出すぎている可能性がある。

2. 抽出温度
 他の条件はそのままに、温度のみを変化させると、どうなるか。挽き方の場合と同じように、両極端の例で考えてみよう。

 温度によって、成分の溶けだし方や抽出速度が大きく変化する。確かに、冷水でもコーヒーを抽出することは可能だ。上のグラフの3つの曲線は右向きにすすみ、つまり時間をかければコーヒーを抽出できるということになる。水出しコーヒーはこうしてできる。挽いた豆を冷水に入れ、冷蔵庫で一日寝かせればコーヒーの完成だ。

main
冷蔵庫で一晩寝かせれば、コーヒー抽出完了 jodimichelle/flickr, CC BY-SA

 カフェインの抽出量はお湯が高温になるほど増え、有機酸はさらに温度の影響を強く受ける。ということは、水出しコーヒーはカフェインが少なく、お湯を使って淹れたものよりもはるかに苦みが軽減されると考えられる。

 次に、沸騰したお湯を使ってコーヒーを抽出してみよう。グラフにすると、曲線は左端で大きく伸びあがる。すべての成分が急速に抽出されるため、苦みの元となる有機酸だけを抑えるのはむずかしくなる。

 さらに複雑なことに、コーヒーに含まれる油分は文字通り揮発性なので、沸騰したお湯でコーヒーを淹れてしまうと風味や香りも一緒に蒸発してしまうのだ。そうしてできたコーヒーはコクがないのに、カフェインや有機酸は多い、という代物になってしまう。

3. 抽出時間
 豆の挽き方、温度、そしてお湯とコーヒーの比率といった変数を一定に保ち、抽出時間に焦点を当てるとどのような結果がでるのか。苦みを生む有機酸を抑えつつ、カフェインと油分は最大限抽出されたものを「理想の一杯」とするならば、グラフ上の「4」の目盛りが示すタイミングが最適だと言えるだろう。

 時間軸が示す「2」の段階で抽出を終えてしまうと、カフェインは多いものの風味や香り、そして苦味の少ない、未熟なコーヒーになってしまう。逆に「8」まで待ってしまうと抽出しすぎとなり、有機酸が多く含まれたコーヒーは苦くて飲めない代物になる。

main
mckln/flickr

4. コーヒー豆とお湯の比率
 ここで注目されるのはコーヒーとお湯の比率だが、これはもっとも主観に左右される部分だろう。コーヒー豆の量が不十分だと、他のすべての変数を最適な値にしても、味の薄いコーヒーになってしまうし、コーヒー豆が多すぎれば、今度は濃すぎで強烈なコーヒーができてしまう。

 コーヒー豆とお湯の比率は、抽出方法によって変える必要がある。

・フランスプレス(プランジャーポット)の場合、お湯の温度が急激に下がるため、コーヒーの比率が高い方が良い
・ドリップ式フィルターの場合は、プランジャーよりも湯温が高くなるため、コーヒーの比率は下げたほうが良い
・現代のエスプレッソマシンは、お湯の量によって味が変化する。通常、マシン内の湯温は約97℃に保たれる。お湯が少なければ味の薄い未熟なコーヒーに、お湯が多すぎれば苦いコーヒーになる

 一般的に広く知られるコーヒー豆とお湯の最適比率は、お湯200ミリリットルに対してコーヒー粉10グラム。大さじ山盛り1杯がだいたい15グラムだ(1、2グラムの誤差あり)。

 さあ、これで準備万端だ。豆を最適な粗さに挽き、お湯の温度と抽出時間を調節し、コーヒーとお湯を黄金比率にセットしよう。それがむずかしいのなら、街へ出て、親切な地元のバリスタを訪ねて話をつけ、その人に代りに考えてもらうとしよう。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by isshi via Conyac

The Conversation

Text by The Conversation