日本紙が提示する参院選の論点とは?

 7月4日、第23回参議院選挙が公示された。21日に投開票が行われる。
 日本各紙は連日、情勢予測や各候補者・党首らの動向を報道している。社説では、各紙が今回の参院選にあたって重要視する論点について取り扱っている。7月1~8日までの日本各紙(朝日・読売・産経)の社説をみると、経済、原発、医療、憲法が主な論点として挙げられている。




【経済】
 各紙とも最も重視しているとみられるのが、経済政策だ。
 まず朝日新聞は、財政再建が重要という姿勢だ。国の借金総額が1000兆円を超えて増え続ける中、経済成長による税収増、増税を中心とする負担増、歳出の削減、という「3本の矢」が必要と訴えている。
 こうした観点から、消費増税の可否について明言を避ける安倍政権と、歳出増が必要な公約を掲げる自民党を批判。同様に、負担増にふれず財政再建の道筋を示さない民主党など野党も批判。将来世代への責任を、各党・有権者に訴えている。

 一方産経新聞は、「成長戦略」の具体化が重要という姿勢だ。
 この点についての各党の姿勢を比較し、医療・福祉などで踏み込んだ規制改革を掲げる維新の会・みんなの党に注目している。自民党に対しては、既存の支持団体との摩擦を乗り越え、規制緩和やTPP推進、農業改革などが実現できるか、覚悟が問われるとしている。
 さらに、毎年首相が交代するような政治の混乱が日本経済の信認を損ねてきたとして、経済再生には安定政権が重要だと示唆している。

 読売新聞も同様に、経済成長と財政健全化の両立、ねじれ解消・安定政権の重要性について論じている。

【原発】
 原発・エネルギー政策について各紙の姿勢は大きく異なる。
 朝日新聞は、自民党が原発再稼働や原発輸出への前のめりの姿勢であることを懸念している。

 一方産経新聞は、自民党以外の主要政党が「原発ゼロ」を掲げたことに対し、電気料金値上げなどにより日本経済へ悪影響を与えるという観点から、批判的に論じている。自民党に対しては、早期の再稼働のために自治体からの信頼獲得に努めるべきと主張している。

【社会保障・医療】
 朝日新聞は、年間40兆円に及ぶ医療財源の確保を大きな課題として挙げている。 負担増が避けられない中、参院選で各党がこの点を正面から取り上げないことに批判的だ。
 さらに、自民などが医療分野の振興で経済成長をめざそうと主張していることに対しては、「医療の高度化」が医療費増につながっていることを指摘している。
また、みんなの党や維新の会が掲げる、「混合診療」(保険のきかない先進医療は患者が全額自己負担、保険診療の併用も認める)の解禁には、製薬会社らがそちらを重視し、公的医療がおろそかになるのではと懸念している。
各党とも、公的医療の財源を確保する道筋を示す必要があると主張した。

【憲法】
 最後に、自民党が掲げる憲法改正についても、各紙の姿勢は異なる。
 朝日新聞は、憲法改正は「いずれ大きな焦点に浮上する可能性がある」と述べるにとどまった。

 一方読売新聞は、自民党、維新の会、みんなの党が、改正の発議要件を定めた96条改正を主張していることを挙げ、参院選の結果次第で、憲法改正が現実味を帯びるとみている。そのうえで、自衛隊の位置づけ、二院制、地方分権など、各党・候補に積極的な論争を求めている。

 産経新聞は、ねじれ解消による政権安定化と並んで、憲法改正を主要な争点と位置づけている。「憲法を国民の手に取り戻す」ために、まずは厳しい発議要件を緩和しようと、96条改正に賛成。ただし改正の核心は9条だと主張。尖閣諸島周辺での領海侵入を繰り返す中国、核実験とミサイル発射を繰り返す北朝鮮といった脅威を挙げ、日本の平和と安全を守るために改正が必要という姿勢だ。

Text by NewSphere 編集部