「1票の格差」解消のために 各紙が指摘する課題と対策とは
衆院選挙区画定審議会(区割り審)は28日、区割り見直し案を、安倍首相に勧告した。「違憲」判決が相次いだ「1票の格差」を是正するため、小選挙区定数を「0増5減」し、17都県の42選挙区で線引きを変更。これにより、格差は最大1.998倍となる。安倍内閣は今後、勧告を反映した公職選挙法改正案を国会に提出する方針だ。なお今回の改定が適用されると小選挙区の定数は295に減り、比例区の180と合わせ、衆院定数は475になる。
日本各紙(朝日・読売・産経)は、まずは緊急避難策として新区割り法を早期に成立させることと、抜本的改革を政治に対して求めている。
選挙制度の抜本的改革が必要であるという主張は、各紙共通している。3月に相次いだ「違憲」判決のもととなった、2011年3月の最高裁判決では、現状の「1人別枠」方式の廃止を求めていることが背景にある。昨年の法改正で同方式の規定は条文上削除されているが、実態は維持されており、これを批判する判決もあった。
こうした中で自民党が公明党と合意した改革案は、第2党以下のため、比例代表に60議席の「優先枠」を設ける案だ。これに対し、産経新聞は、“一票の平等の価値を崩し複雑で分かりにくい”と酷評。読売新聞も、“「1票の価値の平等」という観点から憲法違反の恐れ”があると指摘する。また朝日新聞は、自民党の憲法改正草案が、選挙制度に関して“国会の裁量の幅を広げ、司法によるチェックが働きにくい”ようにする思惑がみえると批判している。
各紙は、各党の党利党略により改革推進が困難ならば、有識者による選挙制度審議会を設けて改革を図るべきという論調だ。
なお制度改革にあたっては、読売新聞は衆参の役割分担、産経新聞は重複立候補の是非や政治資金規正法の強化なども、論点となるのではと述べている。
最後に、今回の司法の判断についての評価はわかれた。朝日新聞は「違憲状態」に留めるとした判決を、“手ぬるい”と断じた。一方読売新聞は、「違憲・選挙無効」の判断に疑問を呈している。1票の格差が何倍までなら合憲なのかが判然としないこと、現行法では選挙無効確定時のやり直し規定がなく、政治の混乱を招くことが理由として挙げられている。さらに、必然性が明確で無い「1年」後に判決の効力が生じるという考え方は、立法の裁量権に司法が踏み込んだとも言える、と懸念。最高裁に対しては、“現実的な判断を示してもらいたい”と述べている。