TPP交渉参加へ 日本各紙が指摘するメリットと課題とは
安倍首相は15日、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を正式に表明した。首相は、国民皆保険制度を守るなど5つの判断基準を掲げ、これらを交渉の中で守っていくと述べた。
また、TPP担当相には甘利経済再生相が就く。甘利担当相は、TPP参加によりGDPを3.2兆円押し上げるという政府試算も公表した。
日本各紙(朝日・読売・産経)は、TPP交渉参加の意義と課題を、それぞれの視点から論じた。
まず、TPP交渉への参加に対しては、各紙とも評価する姿勢である。主に、日本の成長戦略、安全保障、対中戦略という3つの観点から評価されている。
まず成長戦略という観点では、朝日新聞は、TPPはアジア太平洋地域のさらなる発展を促すもので、それを日本の“デフレと低成長からの脱却”につなげるためのものと紹介。そのためにも、同時に規制制度改革を進めよと主張している。産経新聞も、デフレや内需縮小、競争力低下といった難題解決の“切り札”として大いに期待を寄せている。読売新聞は、アベノミクス「3本の矢」である中長期の成長戦略としてTPPを位置づけ、二本の経済成長に欠かせない一歩とみている。
次に安全保障の観点では、読売新聞が、TPP参加により“日米同盟を強化する効果”が期待されるとしている。同紙は、民主党政権のせいで揺らいだ日米関係を改善するものとして評価する姿勢だ。
最後に対中戦略という観点では、産経新聞が最も紙幅を割き、中国の“覇権”ではなく、TPPによる自由主義経済がアジア太平洋地域の枠組みとなるべき、と主張している。背景として、TPPはオバマ政権のアジア太平洋戦略の中核であること、中国もTPPを警戒して日中韓FTA交渉に意欲を見せたことなどを挙げた。朝日新聞も、中国を公正な貿易・投資体制に巻き込むうえで、TPPは武器になると評価している。
では、今後のTPP交渉にあたってどんな課題があるのか。朝日新聞は、自民党内で「聖域」論議ばかりが行われたことを挙げ、「守り」「受け身」では、交渉において足元をみられかねないと懸念する。必要なのは全体としての利得であり、影響が避けられない分野については対策を見極め実行することが重要、と主張する。読売新聞は、国益を反映したルールづくりに取り組むべき、という主張だ。事前協議でアメリカの自動車関税猶予で合意したことを挙げ、見返りに日本は農産品で譲歩を引き出すべきとも述べている。産経新聞も国益を強調するが、そのうえで、前述のメリットを考慮すれば、TPPに加わらないという選択肢はありえない、と強く求めた。