東日本大震災から2年、日本各紙の社説にも変化

 東日本大震災から2年。約32万人が避難生活を続けている。住まい・地域の復興、教育、法制度・・・日本各紙(朝日・読売・産経)はそれぞれの視点で課題を浮き彫りにしている。
 
 まず朝日新聞は、被災者の住まい・地域の復興に焦点を当てた。大防潮堤を超える津波の被害を受けた岩手県宮古市の田老町地区を取り挙げ、「復興」の難しさを示唆している。被災した840世帯のうち、将来も同地区に住みたい世帯は45%。高台移転の候補地は、用地交渉が始まったばかりで、住宅着工まで2年以上かかるという。こうした背景もあり、被災3県の沿岸市町村では、特に若い世代を中心に転出が進んでいるという。
 ここで同紙は、2つの提言を行なっている。1つ目は、住宅の即年着工。国交省が三陸沿岸自動車道の建設を異例のスピードで開始したことを評価し、そのパワーを“住まいと暮らしの再建”に向けるよう求めた。2つ目は、それを実施するための“ソフトパワー”の強化である。復興予算の拡充もあり、工事のハードパワーは溢れかえっている一方、それを進める役場職員などのソフトパワーが足りないと指摘する。
 最後には、行政の壁に阻まれつつも、自らの手で暮らしを再建しようと試みる人々を取り挙げ、“日本全体の手本になる”と希望を描いている。

 読売新聞は教育に着目した。被災地の学校に教師が手厚く配置され、郷土教育などを充実させてきたことを評価した。放課後の学習を助けるNPOの活動も、意義深いと評価している。これに関する提言としては、屋内運動施設の整備やスクールカウンセラーの相談体制拡充などを求めた。
 また、より根本的な課題として、福島県を中心に、子どもの減少に直面する学校が多いことを課題として指摘。自治体には復興の未来像の説明を、政府には被災地の雇用創出支援を、それぞれ指摘している。

 産経新聞は、災害対策基本法(災対法)の抜本改正を求めた。「今起きていること」に対する課題指摘・主張が中心の他紙とは異なり、「次に起きる時」に焦点を当てている。背景として、東日本大震災時には、菅首相(当時)の災対法に基づく「災害緊急事態」を見送っており、それも一因となって、被災地でのガソリン・医薬品不足が生じたと指摘。防災対策推進検討会議が提言した、“非常時の私権制限”も含む災対法の抜本改正を強く求めている。さらに、テロや外国の武力攻撃といった国家非常事態への政府対応を明確に定めていない憲法にも“欠陥”があるとして、改正の必要性を説いている。

 なお、今回取り上げた10日付けの社説では原発に関する記述は少ない(11日付けの社説では、朝日新聞が「皆がまさに当事者」と真正面から取り挙げている)。各紙が記す課題と主張の違いからも、「復興」の困難さが浮き彫りになったといえる。

Text by NewSphere 編集部