オバマ大統領再選―各紙は日米関係の行方に焦点―

 11月6日、アメリカ大統領選の投開票が行われ、民主党のオバマ大統領が再選を果たした。4年前、「チェンジ」「一つのアメリカ」という理念を掲げ当選を果たしたオバマ氏だが、今年の選挙戦は、経済・外交と課題が山積する中、共和党のロムニー氏との苦しい戦いを強いられた。海外各紙が、2期目のオバマ大統領が直面する課題を分析する中、日本ではどのような社説が展開されていたのか。

 朝日新聞は、2本の社説を掲載。当選直後の社説(社説1)では、主に経済面からアメリカ国内の課題を分析するとともに、中東諸国や中国との関係を懸念していた。翌日の社説(社説2)ではじめて日本との関係に詳しく言及。社説1では、アメリカに対して「財政の崖」回避や医療保険改革の実行によるセーフティーネットの整備を求めていた。一方社説2では、日本に対して「新たな日米関係」のため働きかけを求めている。具体的には、「核なき世界」を訴えるオバマ大統領の被爆地訪問を求めること、これを通して朝鮮半島の非核化、中国の核軍縮を目指すことだ。そのために、普天間移設をはじめとした沖縄の基地問題解決、中国や韓国との関係改善にまず取り組むべきとの主張だ。
 確かにオバマ大統領は核軍縮という理想を唱え、ノーベル平和賞を受賞した。しかし、アメリカの経済・外交面で課題が山積し対応を迫れる中、オバマ大統領をいまだに「理想を掲げる大統領」として協力を模索する姿勢は、ナイーブすぎるのではないか。

 読売新聞は、オバマ氏の最優先課題を景気対策と財政再建の両立だと指摘した。実質増税と歳出削減が重なる「財政の崖」による悪影響への懸念を示し、解消のため連邦議会と協力すべきと説いている。議会選の結果「ねじれ」状態は変わらず、下院は共和党が過半数を占めているが、経済の混乱を防ぐための協力が求められている。
 また外交面では、経済・軍事的に傍聴する中国への対策を注視している。アジア戦略に重きを置くようになったアメリカに対し、日本には、TPPへの参加など、日米関係を強固にする努力を求める姿勢だ。

 産経新聞も読売新聞と近い論調で、アメリカに対しては「財政の崖」の回避を、日本に対しては中国抑止を視野に入れた日米関係の強化を求めた。他紙に比べて、中国の脅威を強調する姿勢だ。そのため、アメリカに対しては、財政基盤を固めた上で、オバマ氏が当初模索した「米中強調(G2)」ではなく、アジアシフト外交を徹底するべきだと主張した。指導部交代が予定される中国が、尖閣諸島に対してさらに強硬な行動をとる懸念もあり、日米防衛協力指針の見直しなどを通し、共同防衛の姿勢を強めるよう主張している。日本に対しても、同盟国の責務を果たし、次期オバマ政権のアジア戦略形成過程に加わり、国益や主張を反映するよう求めた。

朝日新聞
オバマ米大統領再選―理念を開花させる4年に(11月8日)
オバマと日本―東アジアで共同作業を(11月9日)
読売新聞
米大統領選 続投オバマ氏を待つ財政の崖(11月8日)
産経新聞
オバマ氏再選 中国抑止の戦略貫徹を 「強い米国」が世界に必要だ(11月8日)

Text by NewSphere 編集部