パレスチナ問題について発信する国際基督教大学の学生達 「深刻なマターだとICU内で示したい」

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私たちが目にするニュースは良いものばかりではありません。

【画像】日本で行われているパレスチナ問題を考える活動

日々絶え間なく飛び込んでくる海外の紛争や凄惨なニュースを見聞きすると、日本にいる自分はただ胸を痛めることしかできないのか、とやるせない気持ちになる人は多いのではないでしょうか。

実は、日本でも様々な国際問題に対する活動の輪が広がっています。

今回は、まさに今戦禍の中にあるガザをテーマに、日本で抗議活動を行う学生達をご紹介します。

パレスチナ問題とは何か?

パレスチナに対する人々の虐殺反対デモを紹介するにあたり、まずはパレスチナ問題について簡単にご説明しましょう。

パレスチナとはそもそも元は土地の名前であり、その中にエルサレムがあります。

エルサレムにはユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それぞれの聖地があるため、宗教的に非常に重要なスポットです。

事件の発端は2000年以上前に遡ります。

当時、パレスチナにはユダヤ教を信じる人々、すなわちユダヤ人の国家がありましたがローマ帝国によって滅ぼされ、ユダヤ人は世界各国に離散(ディアスポラ)してしまいます。

その後、パレスチナにはアラブ人が住み、彼らをパレスチナ人と呼ぶようになりました。

しかし、世界中で迫害を受けたユダヤ人は19世紀頃からかつての祖国であったパレスチナに戻ろう、というシオニズム運動を起こします。

そこでイギリスはこれに目をつけ、ユダヤ人に国家建設を支持するバルフォア宣言を行う一方で、アラブ人、すなわちパレスチナ人に独立国家を約束するという「三枚舌外交」を行いました。

結局、この外交ではもうひとつの約束、フランスとの中等分割及び支配だけが実現されましたが、これを機にパレスチナはアラブ人とユダヤ人の争いの地となります。

その後、ユダヤ人に対するホロコーストが起き、シオニズムの思いは高まります。

国際世論もユダヤ人へ同情し、1947年に「パレスチナの地に国をつくらせよう」というパレスチナ分割決議が国連で採択されました。

翌年にイスラエル建国が宣言されると、広大な土地を奪われたパレスチナ人はこれに反対。

彼らはこの日をナクバ(大惨事)と呼びます。

程なくすると中東戦争が始まりました。

そして1967年の第3次中東戦争にて、イスラエルは国際法上、認められていないところまで占領してしまいました。

こうして、パレスチナ地域におけるイスラエルの占領地域はどんどん広がり、故郷を奪われるパレスチナ人が更に続出。

これを受けてパレスチナの民間人は武装蜂起し、武装戦争が絶え間なく勃発。

オセロ合意など、和平の模索も何度かされましたがどれも失敗に終わってしまいました。

現状としては、パレスチナの過激派であるハマスを中心に、イスラエルとの武力応酬が続いています。

ハマスが支配しているガザ地区は、パレスチナ人が住んでいる地域です。

ガザ地区では日本の種子島ほどの面積に約200万人が住んでおり、その人口密度から「天井のない監獄」と呼ばれています。

パレスチナ問題について発信している国際基督教大学の学生

この非人道的行為に対し、世界各国で若者を中心に抗議デモが発生しています。それは日本も例外ではありません。

国際基督教大学(通称:ICU)に通うKokoneさん(@etto_saiko_no1)。

2024年5月4日に、ICU構内にて『パレスチナに涙を』という活動を行いました。

パレスチナで亡くなる人達を思い、「赤い涙を描く」というこの活動はPalestinans of Japanが始めたもので、開催の権利が万人に開かれています。

Kokoneさんは高校生の時に学校でガザ問題を知り、そこからジャーナリストの発信や当事者のSNS、海外メディア等を利用して情報を追っているといいます。

これまでもガザに連帯するアクションを行ってきたKokoneさんですが、『パレスチナに涙を』の活動をSNSで知り、取り入れたといいます。

「現在のサウンド系のデモにはたくさんの意義があるのですが、日本ではデモが忌避されている現状もあるので、このような死者を追悼することが目的のデモには注目してもらいやすいという役割があると思います」とKokoneさんは語ります。

当日、デモに参加したのは約40人。

現役のICU生、院生、卒業生などが多く集まったといいます。

お昼休みの時間に行ったということもあり、「何をやっているんですか?」と声をかけてくれる方もいたそうです。

先日コロンビア大学ではガザの虐殺反対デモが起きましたが、それに対しICU学長は「この問題について声明を出すつもりはない」という趣旨の発言をしました。

これを受けて、今回のデモでは学長の姿勢について考えたいという学生も多くいたと言います。

本プロジェクトを行ったきっかけの一つとして、KokoneさんはICUに入学し学問を学ぶことが出来るという「特権性」を社会に貢献する形で還元したいと語ります。

「私は今起こっているガザ地区でのジェノサイドは、絶対に許されないもので、今すぐ停戦に持っていかなくてはならないと思っています」

「このプロジェクトは、ガザで亡くなった様々な命を祈るというプロジェクトですが、それと同時にこれは深刻なマターであるということをICU内で示したいという意図もありました。

日本では見えなくなっている問題が数多く存在しますが、パレスチナの虐殺もその一つだと思います。ぜひ多くの人にこの問題に関わってほしいと思います」

さらに、Kokoneさんは日本に住む人々がパレスチナをめぐる歴史の流れを正しく学べていないという問題を指摘します。

自分と一緒に図書館を利用して問題について学んで欲しいと述べました。

パレスチナに関する一般人の知識不足については、背景説明を行わないメディアの責任も重いとする言説も注目を集めています。

さらに、Kokoneさんは日本におけるデモや署名などのプロテストもメディアが積極的に取り上げるべきだと主張しました。

「日本ではプロテストが少ないのはその通りです。しかし、実際には数多くのプロテストが存在しています。

若者が積極的に声を上げて伊藤忠商事とイスラエル軍事産業企業との提携を終わらせた件について、メディアは取り上げていたのでしょうか。『日本の若者は政治に関心がない』という言説は多いですが、それに対して私は日本のメディアが報道してきていないということの責任は重いと思っています」

Kokoneさんは近日中にガザについて学ぶ読書を開催予定で、今後もガザ関連の活動を続けていくといいます。

日本の若者達がパレスチナを思って涙を流し、怒りの声を上げ、そして祈りを捧げる姿は同じく日本で生きる私たちに立ち上がる勇気を与えてくれます。

是非、あなたの視点と方法でパレスチナ問題について考えてみてください。

Text by 楊文果