大学受験でお馴染みの山川出版社「日本史」に英語版 構想から完成まで10年を要した難しさ
教科書や歴史書の出版で知られる山川出版社が、日本史教科書シェアNo.1の『詳説日本史』の英語版『英文詳説日本史』を2024年3月下旬に刊行されました。
日本の歴史を知りたい外国人はもちろん、日本の歴史を外国人に説明する時にも活躍しそうな一冊です。
山川出版社に取材し、発刊にこぎつけるまでのエピソードを伺いました。
構想から10年、完成までに時間がかかった『英文詳説日本史』
日本史教科書の定番『詳説日本史』の英語版の構想が立ち上がったのは約10年前。
『詳説世界史』の英語版と同時期でした。しかし、『英文詳説世界史』が2019年刊行だったのに対し、『英文詳説日本史』は2023年。
発刊まで時間がかかったその理由は、歴史用語の翻訳の難しさにあったといいます。
「世界史の歴史用語の多くは元々外国語であるものを日本語に翻訳しているので、日本語から英語への翻訳も比較的しやすい部分がありました。
しかし、日本史の歴史用語は日本語で生まれているため世界史と同じ方法では翻訳できず、また、定訳もあまりありません。特に日本語は、漢字自体に様々な意味合いが含まれているので、細かな配慮が必要となりました」と山川出版社。
例えば、「壇之浦の戦い」は「battle」なのか「war」なのか(実際の表記はBattle of Dannoura)。「島原の乱」「嘉吉の変」「生麦事件」など、同じような争いの表現でも、どの英語表現が適切なのか、熟考が必要でした。
また、古代から近現代までの日本の通史を扱っていることで、単純に同じ漢字の単語を同じ英訳にできない難しさもありました。
例えば、「町人」はchōnin (townspeople) ですが、江戸時代の町人と、明治維新以降では、意味合いが違ってくるからです。
そのため、世界史版は翻訳会社に翻訳してもらい、監修者がチェックする方法をとりましたが、日本史版は日本史を専門にしている大学教授らに翻訳と監修を依頼。
翻訳の段階から微妙なニュアンスの違いを汲み取っていきました。
そもそも山川出版社が英語版を企画した発端は、「外国人に日本の歴史について質問された時に使える本がほしい」という声があったからだそう。
実際にグローバルに活躍するビジネスパーソンのニーズが高く、世界史版はこれまで3万部以上発行されており、ロングセラーとなっています。
『英文詳説日本史』は図版も多く、人名などの部分には日本語表記も併記していて、読みやすいよう工夫も凝らされています。
日本語版、英語版を一緒に読み比べても、楽しめそうです。
書籍情報
書名:英文詳説日本史 JAPANESE HISTORY for High School
編者:佐藤信 五味文彦 高埜利彦
翻訳監修:近藤成一
翻訳:亀井ダイチ利永子 亀井ダイチ アンドリュー
価格:3,300円(税込)
仕様:A5判・512ページ
発行:株式会社山川出版社