「数字では測れない価値」米でホンダ・プレリュード再評価 専門誌が試乗
American Honda Motor Co., Inc.
四半世紀ぶりに復活したホンダ・プレリュード。アメリカで発表された価格は4万ドルを超える水準で、マニュアル車の設定がないこともあり、発表直後はアメリカのネット上で批判も相次いだ。だが現地の専門誌が実車をテストすると、スペックだけでは見えない長所も指摘され、評価は単純ではなくなってきている。インフレを踏まえれば当時と同水準だとする見方もあり、「加速タイムでは測れない価値がある」という声も出始めた。
◆MT設定なしで価格は4万3195ドル
2026年型ホンダ・プレリュードが発表されると、ネット上には不満の声があふれた。1970年代後半から2000年代初頭まで、5世代にわたり愛された伝説のクーペが四半世紀ぶりに復活するとあって、本来なら歓迎一色となるはずのニュースだった。しかし新型はハイブリッド専用で、マニュアル車の設定がない。価格も4万3195ドル(約680万円)と、マニュアル仕様のシビックSiを約1万ドル上回る。果たして新型は、往年のスピリットを受け継いでいるのか。ファンの間で論争が巻き起こった。
だが実車レビューが出始めると、スペック表から想像される印象とは異なる魅力が次第に明らかになった。アメリカの自動車専門誌カー・アンド・ドライバーが市販仕様をテストしたところ、0-60マイル加速は6秒台半ばにとどまる見込みで、確かにトヨタGR86やマツダMX-5より遅い。しかし同誌が注目したのは、数字では測れない価値だった。
プレリュードは小型ながら後席を備え、リフトバック式ハッチの下には余裕のある荷室が広がる。一台で日常生活を不満なくこなせる実用性は、2シーターのMX-5にはない強みだと同誌は評価する。内装の質感も大きく異なる。GR86やスバルBRZの簡素で古さを感じさせる室内と比べると、プレリュードの上質な仕上げには価格差を納得させるだけの説得力があると指摘した。新型プレリュードには、加速タイムでは測れない魅力が宿っているという。海外の試乗レビューを総合すると、新型プレリュードは純粋な加速パフォーマンスを競う車ではなく、走りのキャラクターやフィールを重視したクーペとして受け止められている。
◆インフレを踏まえれば「妥当な価格」
では、4万3195ドルという価格は本当に「高すぎる」のだろうか。アメリカの自動車情報サイト『エドマンズ』は興味深いデータを示している。2001年型プレリュード・タイプSHの当時の価格を現在の価値に換算すると、約4万7000ドル相当となり、新型はそれを下回る水準になるという。一方で標準モデルとして見れば、新型は当時の価格水準と大きくは変わらないともいえる。
同サイトは「多くの人がノスタルジーによって旧型を過大評価していたのではないか。プレリュードは決して手頃な車ではなかった」と指摘する。
燃費性能も評価点だ。アメリカ環境保護局(EPA)の推定値では、複合44mpgを記録。シビック・タイプRやトヨタGR86(AT)の24mpgを大きく上回る。エドマンズはさらに、内装の質感や荷室の広さでも競合車を凌ぎ、実用性の高さが際立つと評価。「FFスポーツカーというよりFFグランドツアラーだ。世界には、もっと快適で美しいクーペが必要だ」とコメントしている。
◆「実際より速い印象」疑似8速シフトの高揚感
プレリュードが搭載するS+ Shiftは、スペック表からは読み取れない走りの演出をもたらす。トランスミッション自体は単速だが、エンジン回転数を意図的に上下させることで、あたかも8段のギアを操っているかのような感覚を演出する。
自動車専門誌ロード・アンド・トラックによれば、タイトなカーブに差し掛かると3段以上のダウンシフトを模した制御が入り、迫力あるサウンドが響くという。実際に速くなるわけではないが、「より速く感じられる」効果があると評されている。一方でカー・アンド・ドライバーは、加速面では有利にならず、楽しさの上積みも限定的だとみている。
高揚感だけが魅力ではない。エドマンズは、市街地では電気モーターのみで走行する場面が多く、静かで滑らかな走りを楽しめると指摘する。乗り心地はやや硬めだが、「スポーティで車のキャラクターに合っている」との評価だ。ブレーキのフィーリングも良好で、ハイブリッド車にありがちな違和感は感じられないという。
走りを支えるのは、シビック・タイプR譲りの足回りだ。フロントにはデュアルアクシスストラット式サスペンションと、ブレンボ製4ピストンブレーキを採用。ロード・アンド・トラックが日本のテストコースで試乗した際には、タイトなコーナーでも落ち着いた挙動で立ち上がれる印象だったという。タイプRほどの鋭いグリップや精密さには及ばず、ステアリングの情報量も控えめだが、それでも走る楽しさは十分に感じられるとの最終評価だった。
一時はファンから不満の声も上がったプレリュードだが、実車テストが進むにつれ、評価軸そのものが揺さぶられつつある。




