「こいつは最高だ」海外MT派もうなる、GRカローラ8速ATの完成度

Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc.

 北米市場向けトヨタGRカローラの2025年モデルに、待望の8速オートマチック仕様が加わった。これまでマニュアル車を支持してきた自動車評論家からも、意外なほど高い評価が相次いでいる。北米メディアによる実走行テストで、ラリーマシンとしての新たな姿が浮かび上がった。

◆“MT信者”も認めた変速性能
 スポーツカーのAT化は、しばしば批判の的となる。だが、GRカローラはこの懸念をあっさり覆した。

 米ロード&トラック誌は、新開発の8速AT「GR-DAT」について「挙動はBMW M2やM3/M4の8速オートマチックに似ていると感じる。これは非常に高い評価だ」とコメント。BMWのMシリーズに肩を並べる変速フィールを実現していると絶賛した。

 また、米ドライブ誌の編集者ケイレブ・ジェイコブス氏は、GRカローラのAT仕様に試乗し、「そうしない(マニュアルを選ばない)誰かを恥じる正当な理由はない。特に8速がこれほど良いものとあっては」とATの完成度を高く評価。さらに、望めば自らシフト操作を楽しむこともでき、走りは期待どおり十分に楽しいままだと述べている。

◆日常使用で露呈した弱点
 もっとも、通勤など日常用途となると評価は変わってくる。

 ロード&トラック誌は、低速域での大きな欠点を指摘する。「ブレーキを踏んで停車すると、エンジンがトルクコンバーターを引きずるように負荷をかけ、小さな3気筒エンジンはそれをひどく嫌がり、車全体に振動を伝える」。そのため、ATでありながらMT車のようにニュートラルへ入れる必要があったという。

 カナダのトップスピード誌は、燃費面での課題を挙げる。AT仕様はMT仕様に比べて2mpg(約0.85km/L)劣り、市街地走行では3mpg(約1.3km/L)も悪化。同誌が1週間試乗した平均燃費は21mpg(約8.9km/L)にとどまった。もともと燃費重視のクルマではないとはいえ、AT化で数字がさらに落ち込む点は留意したい。

◆速さより楽しさという新境地
 ホンダ・シビック・タイプRやヒョンデ・エラントラNと比べると、GRカローラの俊敏さは一歩譲る。それでも「楽しさでは勝る」との評価がある。

 ドライブ誌は「『タイプRより遅い』と皆が言う。そして、それは事実だ。実際、ヒョンデ・エラントラNよりも遅い。しかし、私は少しも気にしない。なぜなら、こいつは最高だからだ」と述べ、運転の喜びこそが重要だと強調している。

 ロード&トラック誌は、テキサスの悪路での走行を振り返る。「3ペダルの兄弟と同じくらい、まさに活気に満ちたラリーマシンだった」。エンジンは4000回転超でうなり、トラクションコントロールをスポーツに、AWDをトラックモードに設定。AT化されてもなお健在な「走る楽しさ」を味わったという。

 数値では測れない「楽しさ」こそが、このクルマの真価なのかもしれない。

Text by 青葉やまと