レクサスLC500はなぜ別格なのか? 米ジャーナリストが改めて綴る想い

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 レクサスLC500の生産終了が近いとの噂が囁かれるなか、アメリカの自動車メディアでは、このモデルへの惜別の声や再評価の動きが広がっている。ジャーナリストたちの個人的な思い入れを通じて、この特別なV8グランドツアラーの存在意義が改めて浮き彫りになっている。

◆憧れの車との「対面」がもたらす感動
 レクサスLC500は、2017年に登場した高級グランドツアラーで、5.0リットルV8エンジンを搭載し、最高出力は477PS。クーペとコンバーチブルの2種類のボディタイプが用意され、米国仕様の新車価格は約10万ドル(約1500万円)から。米ロブリポート誌は「レクサスの歴史のなかでも象徴的な時期を代表するモデル」と評価し、生産終了の噂が広がるなか、LC500との別れを惜しむ。

 米ドライブ誌のケイレブ・ジェイコブス氏は、長年憧れていた車に初めて乗るという体験は、自動車ジャーナリストにとっても特別な意味を持つと語っている。今年の春に初めてLC500と対面したときの心境を、「好きな俳優と握手する前のように、少し緊張していた」と振り返る。同氏は2021年から試乗を望んでいたが、それがようやく実現したという。

 米ロード&トラック誌のマット・ファラー氏も、LC500に対する強い思いを綴っている。「もしあと数時間しか生きられないとしたら、どの車に乗るか?」という問いから記事を始め、LC500への深い愛情をにじませた。プロのジャーナリストであっても、この車の前では一人のファンに戻ってしまうようだ。

◆自然吸気V8エンジンが紡ぐ「最後の歌」
 電動化とターボ化が進む今、LC500の自然吸気5.0リッターV8エンジンは希少な存在になっている。ドライブ誌はその排気音について「間違いなく、現存するスポーツカーの中でも最高の音だ。雷鳴のようであり、遠吠えのようでもあり、シフトパドルを引くと破裂音(クラックル)が響く」と称賛する。

 ロブリポート誌もまた、LC500のエンジン音を「重低音のようなアメリカンV8とは違い、むしろテノールのようだ」と表現している。さらに、「しっかり回せば、ソプラノ一家の食卓に座っていても違和感がない」とユニークな比喩を交え、その高音域の響きを称賛している。この特別な自然吸気V8の音色を楽しめる時間も、そう長くは残されていないかもしれないと、各誌は振り返る。

◆時代を超える美しさと「将来のクラシック」
 LC500のデザインもまた、時代を超越する美しさを備えている。ロブリポート誌は、「まだ販売中のモデルでありながら、将来のクラシックと呼ぶのに何のためらいもいらない稀有な存在」と述べる。カラーリングのセンスも高く評価しており、「暗い色でも明るい色でも、アースカラーでもパステルカラーでも同じように魅力的だ」と絶賛している。

 ファラー氏も価格に対する価値の高さを強調しており、「見た目は100万ドルクラスだが、実際にはその10分の1の価格で手に入る」と述べている。中古市場を探せば、6万5000ドル(約960万円)ほどで購入できる個体も見つかるという。

 今なお手に入る「未来の名車」として、レクサスLC500の価値は、いま改めて注目されている。

Text by 青葉やまと