「猫カフェは段階的に廃止すべき」イギリスの動物福祉団体が要請
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猫カフェを段階的に廃止するよう求める声が、イギリス国内で上がっている。保護団体などによると、猫カフェという環境で猫本来の幸福を実現することは「ほぼ不可能」なのだという。
◆動物福祉団体が猫カフェ廃止を呼びかけ
イギリスを代表する動物福祉団体の英王立動物虐待防止協会(RSPCA)と猫保護団体のキャッツ・プロテクションが、猫カフェの段階的な廃止を求めている。英タイムズ紙(3月20日)によると、イギリスでの猫カフェの急速な広がりを受けた動きだという。両団体が地方自治体から収集した資料によれば、イングランド全土で30ヶ所を超える猫カフェが営業許可を取得しており、そのうち44%が昨年新たに認可されたものとなっている。
英スカイニュース(3月20日)は、英王立動物虐待防止協会の猫福祉専門家アリス・ポッター氏の見解を伝える。「猫とケーキとコーヒーという取り合わせは人間には楽しいかもしれませんが、そうしたカフェで年中無休で暮らす猫たちにとっては話がまったく違います」。両団体は現在、地方自治体に対して新規営業許可の発行停止と既存許可の更新拒否を呼びかけており、これによって猫カフェを徐々になくしていきたい考えだ。
◆猫カフェの環境は猫本来の性質にマッチしない?
猫カフェは猫の福祉という観点から問題を抱えており、その理由として猫の生態的特徴とのミスマッチがあると指摘されている。タイムズ紙によれば、キャッツ・プロテクションで中央行動責任者を務めるダニエル・ウォーレン・カミングス氏は、猫の共同生活の難しさについて言及している。「複数の猫が同じ空間で暮らすという考え方自体に、無理があります。猫という動物は基本的に単独行動を好み、自分のテリトリーを大切にするのです」
ウォーレン・カミングス氏はさらに「猫たちが直接いさかいを起こしていなくても、ほかの猫が近くにいるだけで精神的な負担を感じることもあります」「カフェで飼う猫を1匹か、もしくは互いに仲の良い2匹に限らない限り、猫本来の欲求を満たすことは難しいでしょう」と説明。
ウォーレン・カミングス氏はスカイニュースに、猫のストレスサインが見逃されがちだと語る。「ストレスを抱えた猫は眠ったふりをすることもありますが、お客さんは単に猫が休んでいるだけだと思い込んでしまうのです」
◆経営者側は反論
一方、猫カフェの経営者たちは、廃止案に反発している。英メトロ紙(3月20日)によると、ロンドンの猫カフェオーナーたちからはさまざまな声が上がっているという。北ロンドンのホロウェイで「ウィスカーズ・アンド・クリーム」を経営するケイ・アレン氏は、安全性に問題のある施設や猫の世話が行き届いていない店舗への懸念には理解を示しつつも、すべての店舗がそうではないと訴えている。氏の店舗は、ロンドン市による動物福祉の査察を受けているという。
また、イギリス初の猫カフェ「レディ・ディナーズ・キャット・エンポリアム」のオーナー、ローレン・ピアーズ氏はタイムズ紙に対し、少しでもストレスの兆候がある猫は店舗スペースに出さず、そうした猫には適切な飼い主を探すよう心がけていると説明している。
猫カフェに「出勤」する猫たちにとって幸せに過ごせる環境か否か、意見が分かれているようだ。