5大商社株買い増し、なぜバフェット氏は日本に注目しているのか?

ウォーレン・バフェット氏|Nati Harnik / AP Photo

 「投資の神様」と名高いウォーレン・バフェット氏が率いる投資機関、バークシャー・ハサウェイが、日本の5大商社の株式保有比率を約8%から約9〜10%へ高めた。アメリカの株式市場が下落するなか、なぜ日本に目をつけたのか?

◆日本の商社株を買い増し
 バークシャー・ハサウェイは日本の5大商社への投資を拡大した。同社は三井物産の持ち株比率を8.09%から9.82%、三菱商事を8.31%から9.67%、丸紅を8.3%から9.3%、住友商事を8.23%から9.29%、伊藤忠商事を7.47%から8.53%にそれぞれ引き上げた。

 バークシャー・ハサウェイは2019年7月から日本の商社株の取得を開始していた。バフェット氏は先月の株主への年次レターで、バークシャーが日本の商社株の保有比率を引き上げる可能性を示唆していた。

 バフェット氏は日本の商社5社になぜ着目したのか。理由の一端は、心理的な親近感にあるようだ。日本の商社が国内外に多様に投資している点を評価しており、バークシャー自体にも似ているとコメントしている。米フォーチュン誌(3月17日)によれば、2024年末時点でバークシャーの5社への投資額は235億ドル(約3兆5000億円)に達していた。

◆米国株売却と対照的な日本株投資
 バフェット氏は日本株を買い増す一方、米国株を大量に売却している。フォーチュン誌によると、バークシャーは2024年に純額1340億ドル(約20兆円)の米国株を売却し、年末の現金保有高を3342億ドル(約50兆円)に倍増させた。同社の株式ポートフォリオは2720億ドル(約41兆円)にまで縮小しており、キャッシュが規模で上回る形となった。

 投資の背景に、日本株の割安感もある。米経済メディアのバロンズ(3月17日)は、アメリカ株が依然として割高であると指摘する。S&P 500指数は今後12ヶ月の予想利益の約20倍で取引されており、ハイテク株中心のナスダック総合指数は25倍だ。一方、東京の日経平均株価は約17倍にとどまり、アメリカの同業他社と比較して割安な水準で取引されている。

◆日本企業の変化に賭ける投資戦略
 加えて、バフェット氏が日本企業に投資する理由は、日本企業の優れた企業ガバナンスと株主還元の精神にもある。フォーチュン誌によれば、バフェット氏は先月の株主へのレターで、「これらの企業への敬意は一貫して高まっている」と述べ、適切な配当の引き上げ、賢明な自社株買い、そしてアメリカと比較して「はるかに控えめな」経営陣の報酬を評価している。

 また、英タイムズ紙(3月8日)は、日本では企業ガバナンスの大規模な改革が進んでいると報じている。安倍元首相の政策のほか、新しい企業統治概念の浸透や、東京証券取引所に新しい責任者が就任したことなど、複数の要因が日本に変化を促しているという。

 同紙によるとバフェット氏は、こうした変化を見越して、「何十年も」日本企業の株式を保有する意向を示しているという。

Text by 青葉やまと