賛否両論のジャガーのリブランディング 取り戻す「コピー・ナッシング」

JAGUAR

 イギリスの自動車ブランド「ジャガー」が、新たなブランド表現と、電気自動車(EV)のコンセプトカー「00」を発表した。

◆新生ジャガー:「活気にあふれるモダニズム」
 11月18日、ジャガーのビジュアル・アイデンティティに関する詳細が発表された。発表ページの冒頭のビジュアルは、鮮やかなオレンジの背景に、オーガンジー素材のドレスをまとった黒人女性の画像。「大胆不敵で、活気にあふれ、圧倒的な魅力がある。それが新生ジャガーだ。(Fearless. Exuberant. Compelling. This is Jaguar, reimagined.) 」とある。ティーザー的なプロモーションビデオに、ダイヴァーシティー溢れる複数なモデルが登場し、車の姿はない。

 今回のリブランディングは、創業者のウィリアム・ライオンズ卿(Sir William Lyons)の言葉にさかのぼる、「コピー・ナッシング(Copy Nothing、何も真似しないの意)」の理念を取り戻した大胆さが特徴だ。ジャガーの変革は、「Exuberant Modernism(活気にあふれるモダニズム)」という考え方に基づいて定義されたとの説明がある。

 これまで大文字で統一されていたロゴは、「G」と「U」以外は小文字の表記となり、全体的に丸みを帯びた印象。「リーパー」(動物のジャガーを模したアイコン)のデザインにも変更が加えられ、「j」と「r」を組み合わせたモノグラムロゴも登場した。

JAGUAR

JAGUAR

JAGUAR

◆新ブランドを体現したコンセプトカー
 全体的にアート性に重きが置かれたビジュアル表現が目立ったリブランディングのお披露目に続き、12月2日、マイアミ・アートウィークの会場で「コピー・ナッシング」の考えに基づいたEVのコンセプトカーが発表された。最も目を引くポイントが「マイアミ・ピンク」と「ロンドン・ブルー」と名付けられた、ゴールド系ローズとシルバー系ブルーのメタリックな配色。ピンクは、マイアミの特徴的なアールデコ建築に、そして、ブルーは1960年代に販売されていたモデルに使用されていた外装色であるオパール・セント・ブルーに着想を得たものだ。

JAGUAR

 『タイプ00』と名付けられたコンセプトカー。最初のゼロは、排気ガスの排出量ゼロを意味し、2つ目のゼロは、このシリーズのゼロ号車であることを意味する。コンセプトカーは実際には販売されないが、今後イギリスで生産される予定の次世代EVは、2025年の終わり頃にリリースされる予定。1回の充電で最大走行距離770キロ、追加15分のスピード充電で321キロの追加走行の実現を目指すとのことだ。高級ファッション地区の中心であるパリの8区には新たなブランド直営店も開店する予定。

 賛否両論を呼んだジャガーのリブランディングの背景には、販売不振がある。世界のジャガーの販売台数は2018/2019年度の約18万台から、2023/2024年度には3分の1近くの約6.7万台にまで落ち込んだ。今回のマーケティング戦略が話題性だけでなく販売実績につながるか。結果がわかるのは2026年以降になりそうだ。

Text by MAKI NAKATA