「2ヶ月で450万円が…」サイバートラック価値下落、元オーナーから嘆きの声

wedmoments.stock / Shutterstock.com

 アメリカで販売中のテスラの『サイバートラック』は、かつてその希少性から、希望小売価格(MRSP)の2倍で転売されるほどの高い需要を誇った。しかし、生産が軌道に乗った現在では転売価格が崩壊。転売目的ではない一般オーナーのなかにも、わずか2ヶ月で手放し、約450万円を失った人が出ている。

◆かつて転売で賑わったサイバートラック
 自動車メディアのオート・エボリューションは、かつてのサイバートラックの中古市場価格の盛況を振り返る。今年3月には、ポルシュのディーラーが新車を24万4000ドルで購入し、4万5999ドルを上乗せして転売。最終的に28万9999ドルで売却され、これが史上最高額となった。

 米自動車ニュースサイトのジャロプニクによると、当初12万ドルだった限定モデルは、転売市場で約2倍の価格で取引されていた。オークションサイトのカーズ&ビッドでは、販売開始当初は15万8000ドルの高値をつけることもあったという。テスラは購入から1年間は利益を乗せて転売できない条件を課しているが、それでも中古市場は賑わった。

◆取引価格は新車価格間近まで下降
 しかし現在、中古市場での最低価格は9万ドルを下回り、最近では8万3000ドルで取引が成立。現在は納期が3〜4週に安定し、新車価格が7万9990ドルからとなっている。オート・エボリューションは、利益を得ようと転売を計画していた所有者たちは、損失を受け入れるか、車を塩漬けにするかの厳しい選択を迫られていると指摘する。

 転売目的でない一般のオーナーも肩を落とす。トルク・ニュースは、サイバートラックの元オーナーであるソーマン・パニカー氏の事例を報じている。

 パニカー氏はサイバートラックを購入したものの、小柄な自身には使いづらい車だと感じたことから売却を決めた。わずか2930マイル(約4700キロ)の走行距離だったが、売却価格は8万8000ドルと予想外の低調に終わった。2ヶ月の使用で、約3万ドル(約450万円)が消えた計算だという。

 ビニールのラッピングを施しており損傷は最小限のはずだったが、テスラ社にさえ下取りを断られ、レクサス以外のディーラーは買取りに興味を示さなかったという。

◆何年も待ったが、実際に乗ってみると……
 価格下落の要因の一つは、生産が軌道に乗り希少性が薄れたためだと考えられる。しかし、それ以前に、利便性に欠けるとの不満が噴出しているようだ。

 オート・エボリューションは、「おそらく何年も待ってようやく手に入れたこの車を所有してから数ヶ月しか経っていない人が、新品の電気自動車を売った」「彼らは、サイバートラックが自分たちの期待していた車ではないことに気づくのに、それほど時間がかからなかった」と不人気ぶりを強調する。

 下落傾向は続く。ジャロプニクは、中古価格を時系列で示したグラフを掲載し、「グラフは衝撃的だ。(サイバー)トラックの価値を示すきれいな下降線が示されている」と報じる。中古価格はまもなく、購入価格を割り込む勢いだ。

 同誌は「(オーナーたちが集う)フォーラムでは、(急落に)驚きの声が上がっている」としている。記事は続けて、落胆するオーナーらに「これまで中古車を購入したことはあるのか」「サイバートラックを投資対象として検討しているなら、株式投資にとどめておいた方がいいかもしれない」と厳しい指摘を投げかける。

 物珍しさが中古市場を牽引(けんいん)したサイバートラックだが、ブームは一段落したようだ。

Text by 青葉やまと