トランプ氏の4年間を洋上で 3800万円のクルーズプランが登場

Villa Vie Residences

 アメリカの大統領選挙にドナルド・トランプ氏が勝利したことを受け、アメリカを脱出したい国民を対象としたサービスが提供され始めた。

◆クルーズ船で過ごす? 4年の任期
 トランプ氏の再選を受け、アメリカではカナダへの移住に関するグーグル検索が急上昇した。それに応えるかのように、同国のクルーズ会社ヴィラ・ヴィ・レジデンス(Villa Vie Residences)は、1年から4年の長期クルーズツアーを発表。4年コースは「スキップ・フォワード」と名付けられた。スキップ・フォーワードは、音楽や動画を再生するとき、間を飛ばして先送りすることを示す表現だ。最長の4年のクルーズに出てしまうと、帰ってくるのは2028年の終りとなる。すなわち、トランプ次期大統領の任期中は、アメリカから離れられるということだ。

 クルーズ船は4年の間に140ヶ国、425ヶ所に寄港する予定で、4年シングルの価格は25万5999ドル(約3800万円)に設定されている。

 ちなみに、1年のクルーズは「エスケープ・フロム・リアリティ(現実からの逃避)」、2年は「ミッド・ターム・セレクション(中間選択)」、3年は「エブリウェア・バット・ホーム(自宅以外のどこか)」と命名されている。

◆アメリカ人移住を歓迎するイタリア
 イタリアのサルデーニャ島のほぼ中央に位置する町、オッロラーイは、最近移住希望者向けの特別ウェブサイトを立ち上げた。

 まずはアメリカ国籍を持つ人に移住してほしいと考える町長は、アメリカ人を優遇すると述べている(CNN)。

 同町が移民ウェルカムを表明するのはこれが初めてではない。前世紀から人口がほぼ半減し現在は1150人を数えるばかりのオッロラーイは、2018年からは空き家を1ユーロで売りに出し、店舗物件も1ユーロで貸し出している。昨年からは、ノマドワーカーを対象に滞在プログラムも組み、これまでに4人のアメリカ人が安価に滞在したという。その見返りとして彼らに課せられる条件は、たとえば芸術作品とか書物といったものを何か一つ創作することだという。(CNN)

◆ささやかれるセレブのアメリカ脱出
 注意したいのは、セレブのアメリカ脱出情報に関するフェイクニュースだ。たとえば、大統領選の結果が判明した直後、SNS上では俳優のロバート・デ・ニーロが脱出を決心したという投稿が相次いだ。だがこれらは、もともとパロディサイトがデ・ニーロの写真を使ってでっち上げた投稿を基にしており、根も葉もない内容だ。(スノープス

 俳優のエヴァ・ロンゴリアも同じようにトランプ当選を受け、アメリカを脱出したと噂されている。だが、ロンゴリアがスペインに居住したのは仕事上の理由によるもので、しかも選挙前からのことだ。(ピープル

◆価値観の相違
 とはいえ、大統領選の前から分断と二極化が進むアメリカに不安を抱く国民がいるのは事実で、外国移住を実行に移したケースも存在する。特に2022年に中絶の権利が廃止されたことに衝撃を受けた女性のなかには、社会的価値観がより近いと感じられる欧州を移住先に選ぶことが珍しくない。フェイスブックには30歳以上の女性の欧州定住を支援するグループも存在し、そのメンバーは1万人を超えるという(USAトゥデイ)。

 しかし、社会の二極化はアメリカだけの問題ではない。母国の外に安息の地が存在するかどうかは、議論の分かれるところであろう。

Text by 冠ゆき