日立、英国でのバッテリー車両の試験成功 時速120キロ超、燃料費削減を実現
日立製作所の鉄道事業子会社の日立レールは8日、8月からイギリスで行っていた都市間バッテリー列車の試験運転について、首尾良く完了したことを発表した。試験は700kW超のバッテリー技術を使用して北イングランドで実施され、当初の目標を上回る成果を示した。
◆英国で旅客用バッテリー列車の走行試験
日立レールは、イギリスのトランスペナイン・エクスプレスおよびエンジェル・トレインズと共同で、バッテリーを搭載したインターシティ車両(都市間輸送車両)の試験走行をイギリスで行った。
試験は8週間にわたり、ヨークとマンチェスター空港間、リーズとリバプール・ライム・ストリート間の路線で実施された。搭載のバッテリーは最大出力700kWを超え、排出ガスと燃料コストを最大30%削減できると予測されていた。
同社は「この重要なプロジェクトは、世界初の旅客用バッテリー列車を日本で、また2022年には欧州初のバッテリーハイブリッド列車Masaccioをイタリアで展開するなど、日立のグローバルな専門知識を活用しています」と述べている。
◆燃料コストを最大半減、事前予測を上回る
試験の結果、燃料コストを35~50%削減できることが実証され、事前予測の30%を上回る結果となった。バッテリー1個で時速75マイル(約120キロ)以上での走行を実現し、駅への入出場に関しては完全なゼロエミッションモードで行えることも実証された。
ユーロ・ニュースは今回の試験を取り上げ、イギリス北東部において、初めて都市間バッテリー列車の試験が成功したと報じている。「トライビッド」と呼ばれるこの列車は、バッテリー、ディーゼル、電気の3つの動力源を簡単に切り替えることが可能だ。
今回の試験では、列車はバッテリー動力のみで70キロを走行した後、ディーゼルエンジンに切り替えた。エンジニアらによると列車は、橋、トンネル、駅などを含む一般的な都市間ルートに対応可能だという。正式運行時の走行距離としては、100〜150キロ程度を見込む。
◆普及なら数十億ユーロの費用節減か
ユーロ・ニュースは、バッテリー駆動列車の利点として、鉄道事業者が非電化路線に架線を新規設置または更新する必要がなくなると指摘する。経済面で利点が大きく、ヨーロッパ全体の電化プロジェクトで数十億ユーロの節約が可能になるとしている。
イギリスのロード・ヘンディ鉄道大臣は「この試験の成功は、より環境に優しく信頼性の高い旅客輸送への道を開くものだ。この技術は、鉄道の変革と脱炭素化に向けた野心的な計画において重要な役割を果たすだろう」と評価している。
日立レールのイギリス・アイルランド担当最高責任者のジム・ブレウィン氏は「試験期間中、一度も故障することなくバッテリー技術を実証できたことを誇りに思う。すでに最も環境に優しい輸送手段である鉄道が、さらにクリーンになった」とコメントした。
ほか、駅の出入りをゼロエミッションモードでこなすことから、騒音対策と大気汚染の軽減にも効果的だと期待されている。