人気ポッドキャストを有料化、ニューヨーク・タイムズの狙いは?

Matthew Nichols1 / Shutterstock.com

 アメリカのニューヨーク・タイムズが、人気ポッドキャストの課金化を開始した。同社は、さらなるバンドル購読者の増加と収入増を見込む。

◆ポッドキャストのアーカイブを課金化
 ニューヨーク・タイムズは、アップルポッドキャストおよびスポティファイと連携し、10月から「ポッドキャスト購読」という形で今まで無料配信していたポッドキャスト番組の課金化を開始した。ポッドキャスト課金の動きは英誌エコノミストがタイムズに先駆け、2023年9月から実施している。

 タイムズは、ニュース記事のほかに、ゲーム、レシピ、オーディオ、スポーツといったさまざまなデジタルコンテンツを配信しており、バンドルパッケージですべてを購読するか、コンテンツを選んで購読することができる。バンドルパッケージについては、週ベースの購読の場合、最初の6ヶ月は1ヶ月(4週間)1ドル、その後は12ドルで、年間ベースの購読の場合は、初年度が10ドル、その後は年間90ドルという価格。一方、レシピだけを購読する場合は、1ヶ月(4週間)2ドル、年間25ドルだ。

 新たに導入されたポッドキャスト購読の価格は、1ヶ月(4週間)6ドル、年間50ドルという価格帯。既存のバンドル購読者にとっては今回のポッドキャスト課金による変化はない。タイムズには、初年度の大幅なプロモーションによって、バンドルパッケージの購読者を獲得し、より安定的な収入源を増やすという狙いがある。

 タイムズは、アーカイブ番組を含めると約40のさまざまな番組を展開している。なかでも人気があるのが、日々起こるさまざまなニュースのなかから毎日一つのトピックを選び、そのトピックに最も精通したタイムズの記者と、番組ホストとの対話を通じてニュースを紐解く『デイリー』、首都ワシントン発の政治メディア『ヴォックス』を立ち上げ、2020年にタイムズに移籍したエズラ・クラインが展開する看板番組『エズラ・クライン・ショー』、恋愛や人間関係をテーマにした人気コラム『モダン・ラブ』から派生した同名のポッドキャスト番組などだ。『デイリー』は、アメリカで人気のポッドキャストのトップ10にランクインする。

 これらの人気番組については、最新の数エピソードについては、当面は今まで通り無料配信される予定だが、過去のエピソードにアクセスする場合は購読が必要だ。

◆ニューヨーク・タイムズのビジネス戦略
 タイムズは、「私たちのビジョンは、(タイムズの)定期購読が、好奇心旺盛で、世界を理解し、関わりを持とうとする英語圏のすべての人に欠かせないものになることだ」と説明する。また、ターゲットマーケットのポテンシャルは少なくとも1億3500万人は存在するとし、実際、のべ1億人以上が(有料購読はしていなくても)タイムズのアカウントを持っているとのデータがあるという。2027年末までには、購読者数1500万人を上回ることを目標としている(2022年時点の戦略目標)。

 同社の2024年第2四半期の報告によると、同期間中、タイムズのデジタル購読者数は正味30万人増加し、購読者数全体は1084万人に到達したとのことだ。デジタル購読の売上高は前年比12.9%増加した。また、バンドル購読者もしくは複数のプロダクトを講読する顧客が全体の45%と最も多いのも特徴的だ。昨年の第2四半期の時点では、デジタルニュースのみの購読者が34%と最も多かった。

 今回、ニューヨーク・タイムズがポッドキャストの課金に踏み切った理由も、純粋なニュース以外のコンテンツを通じて、さらに顧客を囲い込み、バンドル購読者をさらに増やしていくという狙いがあるようだ。

Text by MAKI NAKATA