おうちで気軽に楽しめる「新世代ボルドーワイン」 日本の若者にアピール 高級イメージ払拭
ボルドーワインといえば、シャトー・マルゴーを代表とする高級ワインをイメージする人も多いだろう。格付け第1級の5大シャトーのワインは、一本数万~数十万円もする。その価格は年々上がり続け、今や庶民には手の届かない存在だ。そんなボルドーワインのあり方を払拭しようと、老舗を継いだ若い生産者がサステナビリティなど新たなファクターを取り入れ、コストパフォーマンスに優れたワインを造り出している。特に、「高級」という先入観のない若い世代を取り込むための試みもさまざまだ。
◆若手によるコスパ抜群のナチュラルワインで日本市場に
ボルドーでは、現在、代替わりが進んでおり、長い歴史を持つワイナリーを引き継いだ若手が、革新的な試みにより新たなワイン造りを試みている。
音楽とコラボするDJ造り手、パリの花屋を閉めてワイナリーを継いだ女性造り手など、さまざまなバックグラウンドを生かしたストーリー性のあるワインが注目を浴びている。
もちろん、「サステナブル」「オーガニック」「ナチュラル」は現在のワイン造りのキーワードとして欠かせない。
減農薬栽培を取り入れているという、1870年創立のシャトー6代目のデルフィーヌ・フォール・メゾン氏は、「土中の微生物の活動が良好になり、果実のクオリティーが上がりました」と語る。2019年に父親からシャトーを引き継いですぐにオーガニック栽培を始めたエレーヌ・ポンティ氏は、「イラクサやホーステールなどの雑草の成分を分析し、それらを煮出したものを醸造所の殺菌に使用しています」という。(ワイン王国 7月)
こうしたブドウの栽培に農薬を使わないなど、自然な造りにこだわる「ナチュラルワイン」は、味わいの多様性が魅力。日本では、特に30代以下の若い層に絶大なる人気を博し、市場の広がりをみせている。
◆日本のワイン市場の飛躍的伸び率、若い層に家飲みが浸透
そもそも、世界のワイン需要は、減り続けている。2023年の消費量はピークだった17年から7%減少。ワイン大国フランスですら、余剰ワインが問題になり国が補助金を出している。大きな要因の一つが、若者の酒離れだ。(日経 6月)
一方、メルシャンがまとめたワイン統計によると、日本での2021年のワイン消費量は前年比4%増加し、10年前と比較すると約28%増と市場が拡大。消費数量は40年間で約8倍になり、今やワインは日常に定着している。この点にボルドーワインも注目し、日本でのさらなる市場の拡大に期待をかける。
大手ワインインポーターが2022年に発表した調査結果によると、日本でのワイン消費の傾向は、外食の際より家飲みが増えた人が45.3%と半数に迫る勢い。特に20代・30代の若者世代を中心に、家飲みが増加している。ちなみに、この世代ではワインを飲む理由として「おしゃれだから」がほかの世代より高い。
◆ボルドーワイン定着のため低価格のワインをアピール
そこで、ボルドーワイン生産と世界的マーケティングを統括する組織「ボルドーワイン委員会」は2024年から、サステナブルに重きをおいて造られたコストパフォーマンスの良いワインを日本市場に紹介するプロモーションに力を入れ始めた。
家飲みの価格帯である1500~5000円のレンジのワインをアピールするため、「Re BORDEAUX(リ・ボルドー)」の名の下に、ワインの第一人者5名が同価格帯のコストパフォーマンスにすぐれたワイン50本を選び、「SELECTION 50 BORDEAUX2024」としてプロモーションの象徴とし、店頭販売やイベントでのボルドーワインの顔としている。
また、ボルドーワインとの出会いの機会をつくるため、11月には「ボルドーワイン×レストラン 2024」というイベントを開催し、首都圏を中心に全国約200店舗のレストラン、ビストロ、バーなどにおいて、特別価格でボルドーワインを提供。さらに、ボルドーワインを学ぶセミナーも定期的に開催するなど、ボルドーワインを若者中心に定着させるべく施策を重ねている。
もともとニッチであるワイン市場。家飲みなど趣味として楽しむ人を増やしていくことが市場拡大につながる。ワイン初心者の若い層を開拓していければ、日本におけるボルドーワインの新たな未来が見えてくるのではないか。