ドルチェ&ガッバーナの犬用香水、獣医師から懸念の声も

Gregorio Borgia / AP Photo

 ファッションブランドのドルチェ&ガッバーナが、犬用香水「フェフェ」を発売した。動物用として認定された商品ということだが、犬本来の能力を低下させてしまう可能性も指摘されており、物議を醸している。

◆デリケートな香りで豪華な瓶入り 安全性も保証
 話題の犬用香水は「イランイラン、ムスク、サンダルウッドのフレッシュでデリケートな香り」をブレンドしたものだ。容器は緑色のラッカー仕上げのガラス瓶で、金メッキの肉球が描かれている。100ミリリットル入りで値段は99ユーロ(約1万6000円)だ。

 商品名のフェフェは、同社の共同オーナー、ドメニコ・ドルチェ氏の愛犬のプードルの名前を冠したものだ。動物用化粧品としての安全性は、イタリアの認証サービス機関によって保証されているという。

◆嗅覚に影響? 病気を見逃す可能性も
 しかし、犬に香水を使うことに対し、獣医師からは懸念の声も出ている。理由の一つとして挙げられたのが、犬の嗅覚が低下する可能性だ。フェニックス獣医学センターによれば、人間の嗅覚受容体600万個に対し、犬のそれは3億個もある。そのため犬は、埋められた爆発物、がんなどの病気、さらにはストレスまで、嗅覚で探知することができるのだという。(AP

 イギリス動物愛護協会(RSPCA)の上級科学官アリス・ポッター氏は、犬はその嗅覚によって環境、そしてその中にいる人間やほかの動物とのコミュニケーションを取っていると指摘。そのため、香水やスプレーのような香りの強いものは避けるようにとアドバイスしている。(CNBC

 イタリア・ローマの獣医フェデリコ・コッチア氏は、犬は「匂いの引き出し」に保存した情報をもとに人を識別しているため、香水を振りかけることで犬の匂いの世界を変えてはいけないと述べている(AP)。

 香水はまた、犬の自然な匂いを隠してしまうとコッチア氏は指摘。進行中の皮膚病などがあり、その病気の症状かもしれない悪臭も、覆い隠されてしまうとしている。さらに獣医師の診断においては口臭や耳垢の匂いは重要であるため、香水で匂いが分からなくなるのは問題だと付け加えた。(AP)

 一方、香水の利点もあるという。ケンブリッジ大学獣医学部のドナルド・モーリス・ブルーム教授は、ラベンダーのような甘い香りのオイルを短時間浴びることで、犬が落ち着くことがあると指摘。フェフェに含まれるイランイランなども良い効果をもたらすとしている。(CNBC)

◆ペット用香水市場拡大中 過去にはエリザベス女王も参入
 APによれば、実はペット市場では犬用香水がよく売れているという。マーケティング会社の調査によれば、ペット用香水市場は、2024年時点では14億4000万ドル(約2100億円)規模とされ、2034年には22億6000万ドル(約3300億円)に達すると予想されている。

 ペット用香水は以前から販売されており、ガーディアン紙によると、2007年にイギリス・ロンドンの高級百貨店ハロッズが「セクシー・ビースト」という犬の香水を発表している。2022年2月には、故エリザベス女王が王家の紋章をあしらった犬用香水「ハッピー・ハウンズ」を発売していた。

 ドルチェ&ガッバーナのもう一人のオーナー、ステファノ・ガッバーナ氏は、イタリア紙に「市場の反応は上々で、発表時には誰もが熱狂した」と語ったという(ガーディアン紙)。CNBCによれば、同社は動物の専門家から寄せられた懸念については、コメントを避けたということだ。

Text by 山川 真智子