三菱ミラージュ85%増、日産ヴァーサ61%増…なぜ米で小型車が売れているのか? 上半期

日産ヴァーサ|日産自動車

 アメリカで日本メーカーの小型車が好調だ。なかでもとくに、日産 ヴァーサと三菱 ミラージュの需要が高い。前年同期比で最大8割増しの売れ行きを見せている。

◆新車価格の高騰で、シンプルなモデルに熱視線
 安い自動車が売れている背景に、新車価格の記録的な高騰がある。消費者としてはベーシックで実用性重視のモデルへ手を出す傾向となった。米ドライブ誌(7月3日)は、新車が「かつてないほど高価になっている」と指摘。「消費者は、市場で最も安いモデルを購入するという、わかりやすい方法で対応しているようだ」と伝えている。

 北米日産北米三菱が7月4日に発表した、アメリカにおける2024年上半期の販売台数は、日産 ヴァーサで前年同期比61%増、三菱 ミラージュに至っては85.5%増を記録した。2024年第2四半期の売り上げに限れば、後者は前年同期の1974台から4859台へ、146.1%の伸び率となっている。

 ヴァーサの価格は1万7820ドル(約288万円)からと、物価高のアメリカとしては手頃だ。米モーター・ワン誌(5月8日)は、「現在アメリカで最も安い車」だと紹介している。価格に反して基本装備が充実しており、快適で安全なドライブができると同誌はみる。ベースモデルでも、7.0インチのタッチスクリーン、運転支援システムのセーフティシールド360、広いヘッドルームとレッグルームを備える。

◆ビュイックに匹敵する快適性
 モーター・ワン誌はヴァーサの快適性について、「フル装備のヴァーサは、ミッドレンジのビュイックと同じくらい良好だ」と評価している。

 記事は、「ヴァーサはA地点からB地点まで、何の飾り気もなく移動するように設計されている」と実用性重視のモデルだと述べながらも、「しかし、驚くべきことに、乗り心地は洗練されている」と語る。2万ドル未満でムダのない納得の走りが手に入ることから、「率直に言って、もっと多くの人が乗るべきクルマだ」と主張する。

 一方、米トゥルース・アバウト・カーズ誌(5月30日)は、三菱 ミラージュの手頃さを強調している。燃費は市街地で34mpg(1リットルあたり約14.5キロ)、高速道路で41mpg(同約17.4キロ)と良好で、維持費に利点がある。また、ハッチバックでなくセダンを好む場合、ヴァーサよりもミラージュを同誌は勧めている。セダン型のエントリーモデルであるミラージュ G4 ESは、同等のヴァーサよりも1000ドル(約16万円)ほど安く見つかることが多いという。

三菱ミラージュ|三菱自動車

◆小型車の勢いは今がピークか
 勢いに乗る小型車だが、売れ行きは今をピークに、今後減退するとの声もある。アメリカの主な自動車メーカーは、アメリカの排ガス規制に対応するため、数年前に最小サイズの車の生産を中止した。さらに、欧州ブランドもアメリカ市場への小型車の出荷を止めている。

 このため現在、キアを含め、アジアのメーカーがこのセグメントを担っている。しかしながらトゥルース・アバウト・カーズ誌は、小型車の収益性は低いと指摘している。キアは2023年モデルを最後にリオを廃止し、代わりに上級モデルのキア K4を導入する予定だ。

 加えて、モーター・ワン誌は、月々の支払額に50ドル(約8000円)を追加するだけで、少し大きめのセダンやSUVを購入できると指摘する。このため、多くの自動車メーカーは、小型車を維持する理由がないと考えているという。安価な小型車が売れているのは、物価高に加え、市場から姿を消す前に入手しておきたい心理も働いているのかもしれない。

Text by 青葉やまと