「ドリームチーム」「プロセスより人」ネットフリックスの“普通じゃない”企業文化とは?

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 一般公開されているネットフリックスの内部文書『カルチャーメモ』が更新されたことが話題を呼んでいる。独自の企業文化を物語る、その内容とは。

◆自由と責任を同時に果たすトップパフォーマーであれ
 ネットフリックスのチーフ・タレント・オフィサー、セルジオ・エザマ(Sergio Ezama)が6月24日、同社の新しいカルチャーメモを公開。カルチャーメモは、社員への期待を明示することによって企業文化を明記した社員向けの文書。ベースになっているのが、同社の共同創業者で当時、最高経営責任者(CEO)の役職にあったリード・へイスティングスが2008年8月に開示した125ページのプレゼン資料。文書はこれまでに何度か更新されてきたが、今回の更新は、ヘイスティングスが共同CEOの座を退任し、新たな経営体制になってからの初めてのことだ。

 新たなカルチャーメモは、社員からの1500以上のフィードバックコメントなどを経て、1年かけて改訂され、新たな文書はより簡潔なものとなっている。文書に明記されている基本理念は4つある。その一つが、高いパフォーマンスを発揮できる社員だけを雇い続ける、つまりドリームチームを目指し、維持するという点。チームとは「家族」ではなくプロスポーツチームのような集団だという。最高の人材を維持するために「キーパーテスト(Keeper Test)」の概念が取り入れられている。キーパーテストは、「もしその社員がネットフリックスを離れることを希望したら、自分は必死に引き止めようとするだろうか?」「今、分かっていることを採用当時にすべて知っていたとしたら、この人を再び雇うだろうか?」と問いかけ、答えがノーであれば速やかに退職してもらうという考え方である。年間約9%の社員が退職勧奨されているそうだ(ニューヨーク・タイムズ)。

 もう一つの重要な理念が「プロセスより人」、つまり自由を最大限に活かし活躍できる、ずば抜けて責任感を持った人材を採用し、評価するというもの。同社には公式な休暇制度や経費精算規定が存在しない。自分で判断して休暇を取り、ネットフリックスにとっての最善の利益を考えて経費を使うという大枠の指針のみが示されている。細かいプロセスやルールを導入するのではなく、社員一人一人の自己判断に委ねるという方針だ。

◆「普通じゃない」企業文化は、エンタメ企業の強み
 カルチャーメモに記載されたことは、どこまで本当に実行されているのだろうか。一般に公開することで、他社よりも目立ち、メディアの注目を集めるという目的もあるだろう。実際にカルチャーメモはメディアが取り上げたり、ほかのテック企業が追随したりという事例がある。

 ニューヨーク・タイムズの記事は社員に対する取材を踏まえ、「多くの社員は懐疑的で、このメモ自体が会社を目立たせるための広報活動だと思い込んでいた。しかし彼らの一部は、今では80%から90%が正確な内容だと語っている」と伝える。社員同士でフィードバックし合うという文化を、無意識のうちに私生活にまで持ち込んでいるケースもあるようだ。

 カルチャーメモの末には、「星の王子さま」の著者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが引用されている。その概要は、船を造りたければ(仕事を割り当てるのではなく)、果てしなく続く海への憧れを示せというものだ。クリエイティブな商品を用いて対価を得るエンターテインメント企業だからこそ、個々の社員が自分の才能を最大限に発揮できるような企業文化が求められるのだろう。

Text by MAKI NAKATA