豪で「つながらない権利」認める法案可決 上司からの時間外連絡にノー

ChameleonsEye / Shutterstock.com

◆フランス、ドイツなどでも施行
 オーストラリア政府は2022年以降、雇用の安定、賃金の受給権、柔軟な労働形態など被雇用者の権利を保護するため、公正労働法の改正に着手していた。2022年に「雇用の安定と賃金の改善」法案、2023年には「抜け穴をふさぐ第1号法案」を成立させ、すでに一部が施行されている。たとえば、雇用契約における給与秘密条項が破棄され、社員間で雇用条件を公表することができる。また、雇用者と被雇用者が報酬などの問題について9ヶ月以上交渉し、難航している場合、公正労働委員会が交渉の決定権を持ち判断を下すことも可能になった。(SBSニュース、2/12)

 今回法案の成立について、オーストラリアの労働組合は、労働者の無報酬の時間外労働時間が年間最長280時間に達したアフターコロナの働き方を改革できるとして歓迎した(レジスター、2/12)。

 一方、オーストラリア商工会議所は共同声明で、上院に対し、「急ぎすぎで欠陥のある」法案と呼ばれるこの法案の意味を慎重に再考するよう促した。「テクノロジーによって働き方は柔軟になり、多くの従業員が9時から5時までデスクにいる必要がなくなっている」と意見を示した。(ロイター、2/8)

 シドニー大学ビジネススクールのクリス・F・ライト准教授は、オーストラリア経済における数十年間の変化を考慮すると、今回の改正は「必要なものだ」と述べた。「この30年間、基本的に雇用者側に有利な法律が制定されてきたが、今回の改正は雇用者側と被雇用者側のバランスを調整するための基軸になることが調査で明らかになっている」(SBSニュース)

 従業員にデバイスの電源を切る権利を与える同様の法律は、フランス、ドイツ、その他の欧州連合(EU)諸国ですでに施行されている。

Text by 中沢弘子