生成AI作品に警戒 アマゾンが個人出版件数に制限

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◆アマゾンがAIに警戒を示す理由
 アマゾンは8月、ある著者の名前を勝手に使い、生成AIを使って書かれたと思われる5冊の本を、著者本人からの苦情を受けて、プラットフォーム上から削除した。アメリカのオハイオ州に住む、実在の著作家であるジェーン・フリードマン(Jane Friedman)は、出版業界に関する経験と知見を持ち、『The Business of Being a Writer(著作家というビジネス)』という実際の著作もある。個人出版に関する記事を書いた経験もある人物だ。

 アマゾンには、フリードマンの実際の本を模倣したようなスタイルで、「電子書籍を執筆し、出版するには」といったようなハウツー本が、出版・販売されていたとのことだ。彼女のスタイルを真似て、彼女の名前で出版されていた本がAIを使って書かれたものなのかどうかの確証はないが、フリードマンは、少なくとも一部は生成AIによるものだと主張する。彼女は2009年から執筆や出版に関するさまざまな記事を自身のブログに投稿してきたが、その投稿内容がAIのトレーニングに使われたのではないかと推測しているようだ。

 当初、フリードマンがアマゾンに訴えた際、アマゾン側は彼女の氏名が商標登録されていなかったため、偽の著作を取り下げることはできないと回答していたようだ。しかし、フリードマンがこの事件についてSNSなどでの発信を続け、結果的には該当の本はアマゾンが所有するプラットフォームからは取り下げられたようだ。

 今回発表されたアマゾンの個人出版件数制限が、どこまで効果を発揮するものなのかは不明だが、同社は生成AIコンテンツがあふれ、模倣作品が出回ってしまう前に、何とか予防したいという思いがあるようだ。一方、生成AIがますます一般化し、生成AIを使った本が普及していくことで、同社がどのような判断を下すのかという点については未知数だ。アマゾンにとっては、生成AIコンテンツは新たなビジネス拡大の機会でもあり、質や信頼を担保する点においてはリスクでもある。

Text by MAKI NAKATA