「水専門バー」がドバイにオープン 水道水にミネラルを配合

Kamran Jebreili / AP Photo

 まずは、バナナとその日のベリーとウィートグラスのスムージー。それから水出し濃いめのミルクラテのようなもの、ドイツでいうところのクラフトビール、数量限定のじっくり熟成したノンアルコールカクテル。

 あらゆるものが最先端をいく中東のハブ、ドバイに新しくできたバーでは現在「グルメウォーター」を提供中だ。

 メニューは30種。ルケル社の手がける「ジ・アクア・ウォーター・バー」では、その水を昔ながらのやり方で、つまり水道の蛇口から入手している。

 ドバイに住む人の多くはボトル入りの水を選ぶが、政府によると水道水は安全に飲むことができ、国際基準も満たしている。

 バーでは、ドイツで浄水器を扱うルケル社が設計したマイクロドージングシステムを用いてミネラルを注入。アルプス山脈の水だろうが北極圏の水だろうが、あらゆるタイプの水を愛飲している人のニーズに応え、高級水ブランドのミネラルウォーターに対抗しようというのだ。

 同社でマネージングディレクターを務めるロイア・ジャバリ氏は「水ソムリエが、お客様のニーズと気分にぴったりのドリンクを考案しました。パーフェクトな配合のミネラルを入れ、ご提供いたします」と話す。カリフォルニア州サンディエゴ生まれで、UAE居住歴は24年だという同氏は、水をテーマにウォーターバーのデザインを手がけた。泡のような形の照明が、デコールの青と白を照らす。自身のルーツを大切にし、ペルシャ料理も出している。

 「ランナーズ・ヘブン」にはナトリウムとカリウムがたっぷり入れられている。ジョガーが炎天下の砂漠のような暑さから回復できるよう考案された。「ヴィーガンズ・チョイス」は、ストイックに野菜のみの食生活を送っていると不足しがちなミネラルを補給できる一杯だ。好きなミネラルの配合を選んでボトルに入れてもらえる。価格は500ミリリットルあたり50セント前後だが、追加料金を払うとモクテル(ノンアルコールカクテル)も選べる。

 これは、まったく新しいコンセプトというわけではない。

 飲料メーカー各社は長きにわたり、自然の湧き水や、遠くの山々で採取した水を販売していた。そこへ何年か前にコカ・コーラとペプシが参入。甘味料と炭酸を加え、エビアンやペリエに競合したことで、水と炭酸飲料の境界線があいまいになっていった。

 消費者がより健康的なライフスタイルを好むようになり、水道水は危険だともっともらしく言う声も多々あることから、そのような製品の人気が高まっている。

 ボトル入りの飲料水はアメリカで最も広く消費されている飲み物で、コンサルティング会社のビバレッジ・マーケティング・コーポレーションによると、平均的なアメリカ人の年間消費量は46.5ガロン。対するソフトドリンクは、36ガロンにとどまる。しかし、バーでアルコールを飲みすぎた常連客に水をサービスすることはあっても、水専門のバーはなかなか見ない。

 ニューヨーク市の水道水を丁寧に浄水したとするものを提供するウォーターバーが、2012年に同市イースト・ヴィレッジにオープンしたが、批判が殺到した。もう一軒、2019年に首都ワシントンで一時期営業していたことがあったが、どちらもあまり長く続いた様子はない。

 ところが砂漠の上に広がるウルトラ現代的な大都市、ドバイが、そのトレンドを育む肥沃な土壌となる可能性を秘めている。

 ドバイをはじめとする7つの首長国からなる連邦国家、アラブ首長国連邦では、バーやクラブでアルコールを飲むことができるが、イスラム国家である同国には一滴も飲まないという人も多い。国際通商のハブとして、ウェルネス業界を後押しする裕福で健康意識の高いタイプの人たちから注目を集めている。

 ジャバリ氏はウォーターバーについて、よく訪れるのは近くのドバイ・メディア・シティに勤務するスーツ姿のビジネスマンだが、水500ミリリットルあたり2ディルハム(54米セント)という値段は高すぎることはないし、富裕層のみをターゲットとしているわけではないと強調している。

 サステナビリティへの配慮から、同店では客にボトルを持参してもらうか、約2.5ドルからで販売する再利用可能なボトルを利用してもらう。ジャバリ氏は「ペットボトルを持って歩いている人を見ると、黒板を引っかくような気分になってしまいます」と言う。

 オープン後の評判は上々のようだ。グーグルの評価では、十数名の口コミをもとに星4.6個を獲得している。

 試しにウォーターバーに立ち寄ってみたというビラル・リズヴィ氏は「(そこの水は)実際に違いました。とてもいいですね。ターメリックウォーターが最高でした」と話す。

 ジャバリ氏は、自身もお気に入りのモヒート・モクテルが人気だとして「キュウリとライムをひと搾りし、アガベシロップとハチミツでほんのり甘めに仕上げています」と話す。

 ドバイ近隣の乾燥地帯に成長の余地があると見て、ビジネスの拡大を狙っているという同氏は「サウジアラビアは、とても大きな市場です。次に進出するならアブダビだと思っています」と述べている。

By NICK EL HAJJ Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP