ドリンク飲み放題、配達無料…サブスク導入で試行錯誤する米飲食店

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 動画配信サービスからペットフード、さらにトイレットペーパーにいたるまで、消費者はサブスクとして月額料金で購入することをいとわない。ならば好きな料理についてもそうするだろうと飲食店も動き出している。

 パネラブレッドやPFチャンズといった大手チェーンのほか、近所の住人が集う小さな店でも、安定的な収入と集客を確保する手段としてサブスク制を試験的に導入している。たとえば毎月決まった額で、ドリンクが飲み放題になったり配達料が無料になったりする。来店時に好きな前菜をサービスしてくれる店もある。

 個人向け資産管理アプリのロケット・マネーによると、2022年のアメリカ人の平均サブスク利用件数は6.7件と、2019年の4.2件から増加しており、飲食店もその流行に乗っかろうとしているのだ。

 ワシントンのミシュラン一つ星レストラン、グラヴィタスのシェフ、マット・ベイカー氏は「お客様に一定レベルのサポートと喜びを、そして料理への愛をご提供するための一つの手段に過ぎません」と言う。グラヴィタス・サパー・クラブのサブスク会員は、月額130ドルでテイクアウト用の3品のコース料理(2人分)を楽しめる。同氏によると、グラヴィタスはパンデミック中にテイクアウトへと移行したが、店舗が再オープンすると需要は徐々に消えていった。サパー・クラブは月約60人が利用しているので、その分の収入は常に確保できている。

 P.F.チャングスも、9月に開始したサブスクプランがテイクアウトの注文件数を伸ばすきっかけとなった。会員になると、月額6.99ドルで配達料無料をはじめとする特典を受けられる。

 ほかには、来店時の料金を先払いするメンバーシップ制を試している飲食店もある。

 サンフランシスコのバー、エル・ロポでは26人がテイク・ケア・オブ・ミー・クラブの会員となっている。こちらの会員になると、月額89ドルで100ドル分または月額175ドルで200ドル分のダイニングクレジットを購入可能だ。来店すると、好きな料理を用意してもらえる。また、店内にいる人なら誰にでもドリンクを1杯無料でプレゼントできる。

 エル・ロポのオーナー、ダニエル・アザークマン氏は、パンデミックが落ち着いたときに常連客が戻ってきてくれるようにと2021年3月にテイク・ケア・オブ・ミー・クラブを開始した。現在では、同じようなサービスを始めたいという全国各地の飲食店から問い合わせが来ている。

 同氏は「実際の成果はというと、常連客の来てくれる回数が増えています」と話す。

 インスティチュート・オブ・カリナリー・エデュケーションでインダストリー・リレーションズのエグゼクティブディレクターを務めるリック・カマック氏は、今後数年でサブスクサービスを始める飲食店がさらに増えるだろうとしている。同氏によると、消費者はサブスクを日常的に使いこなしているし、飲食店側としては毎月一定の収入があることで、キャッシュフローの管理がしやすくなる。

 しかし、すべてのサブスクサービスが成果を上げられたわけではない。オン・ザ・ボーダー・メキシカン・グリルは2021年、1ドルで1年間チーズのディップソースが無料になるケソ・クラブを導入した。ところが1年後には、新規会員の受付を停止している。

 同店のマーケティング責任者、エディサン・レイミー氏によると、15万人超がケソ・クラブに登録。会員の来店数は、平均より7回多かった。しかしダラスに拠点を置く飲食チェーンは、ディップソースのコストを補えるほどの収益を上げられていなかった。

 オン・ザ・ボーダーは現在、サブスクサービスを改良中で、年内にも再導入する見込みだ。値上げか月額制への変更があるだろうが、サブスクの要素は残していくとしたうえで、同氏は「ホットなトレンドになりつつあります。私たちは、第一線を走るブランドであり続けたいのです」と言う。

 タコベルもまた、10ドルのタコ・ラバーズ・パスを改良中だ。購入すると、1ヶ月間は1日1個タコスが無料になる。2022年1月に始まり、10月に再度導入された。大きな話題を呼んだが、タコベルのデジタル責任者であるデイン・マシューズ氏は、どうすれば顧客にとってより価値の高いものにできるか検討中だとしている。たとえば、提供時間の短縮や、限定メニューの提供といった特典が考えられる。

 厨房を回すだけで手一杯だとして、サブスクサービスを中止したレストランもある。

 デトロイトの高級イタリアン、シーウルフは2020年末に、月額80ドルでパスタとソース、おかずが入った弁当を提供するサービスを開始した。しかし半年後に店舗が本格的に再オープンすると、数百個の弁当箱を組み立てる作業に手が回らなくなった。

 しかしシーウルフは、サブスクを捨てたわけではない。同店でビバレッジディレクターとして働くダン・ライニッシュ氏は、1ヶ月あたり60ドル以上の支払いをしている約80人のサブスク会員に、イタリアンワインをプレゼントしている。

 比較的上々な結果を残せたところもある。セントルイスを拠点とするパネラブレッドは2020年初め、ロイヤリティプログラムで4千万人近い会員を集めたが、もっと頻繁に来店してもらえるよう働きかけたいと考えていた。そこでサブスクサービスを開始。月額8.99ドルで、コーヒーと紅茶を飲み放題にした。すると顧客が週に数回来店するようになり、3回に1回は食べ物を購入するようになった。

 昨年にはサブスクサービスを拡張した。現在は月額11.99ドルまたは年額119.99ドルで、ホットドリンク、コールドドリンクを飲み放題としている。年会員には配達料無料の特典もついてくる。

 パネラブレッドのブランドおよびコンセプト責任者のエドゥアルド・ルス氏は、正確な数値は口にしていないものの、サブスク会員が同チェーンの取引の25%を占めていると明かしている。

 同氏は「来店を促進するうえで非常に有効なサービスです」と言う。

 サブスクというアイデアは、海外にもあっという間に広まった。パネラブレッドと同じ会社が所有するサンドイッチチェーンのプレタ・マンジェは、2020年にイギリスでコーヒーのサブスクサービスを開始した。11月の時点で週に120万回利用されている。さらに、フランスとアメリカでもサブスクを展開中だ。

 カリフォルニア州南部でコミュニケーションコンサルタントをしているクリス・ハスフォード氏は、1年前にパネラブレッドのサブスクプランに登録した。いつも通る道には、パネラブレッドが4~5店舗。コーヒーと一緒に何か軽く食べるものをとよく立ち寄っている。

 同氏は「私の場合は、とてもお得とまではいかなくて、多分平均すると月5~10ドルといったところでしょうか。それでも満足しています」と言う。

By DEE-ANN DURBIN AP Business Writer
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP