マスク、イェ、トランプ…メディアを手に入れ、影響力を増す富豪たち
イーロン・マスクのツイッター買収、イェのパーラー買収といった動きを受け、富豪たちが影響力を拡大するメディア業界に、改めて注目が集まっている。その詳細とは。
◆元カニエ・ウエスト、「保守派のツイッター」買収へ
10月17日、音楽界の大物でファッション界でも活躍の場を広げているイェ(Ye、元カニエ・ウエスト)が、保守派のツイッターとして知られるソーシャルメディアプラットフォーム、パーラー(Parler)を、米国テネシー州ナシュビルにある親会社、パールメント・テクノロジーズ(Parlement Technologies)から買収することで合意したとの発表があった。同社のプレスリリースによると、音楽とアパレルを通じて史上最も裕福な黒人男性となったイェは、昨今、ビックテックからの検閲に対して大胆な姿勢を示し、キャンセルされない環境を作ることを目指して立ち向かっているとある。リリースでは「保守的な意見が物議を醸すとされる世の中で、自由に自分を表現する権利を確保しなければならない」といったイェのコメントも記載されている。
パールメント・テクノロジーズは自社について、ビッグテック、大きな政府、検閲およびキャンセルカルチャーへの対抗を導く存在であると説明する。パーラーは、同社を代表するSNSで、「表現の自由」の擁護を標榜する。結果として、リベラル派のSNSにおいては過激、センシティブ、偏見や差別の意図があるとして検閲される可能性が高い、いわゆる保守派に好まれるプラットフォームとしてのポジショニングを確立している。しばしば保守派のツイッターなどと表される。
米ピープル誌は、2021年3月時点、当時のカニエ・ウエストの資産が66億ドルと想定されると報じた。うち、ウエストのスニーカーとアパレルのブランド、イージー(Yeezy)の事業価値が32〜47億ドルとの推定だ。アントレプレナー誌は、2020年4月にウエスト自身が、自分の資産価値が30億ドル以上だとしたが、その後、フォーブズ誌が13億ドル程度だと意義を唱えた。いずれにせよ、多額の資産を所有していたウエストだが、最近になってその物議を醸す発言がより過激化し、ビリオネアではなくなったと同誌は報じる。イェはSNSなどを通じて反ユダヤ的な発言をし、それがもとになってパートナーシップの長期契約を結んでいた巨大ブランドのアディダスやギャップがイェとの契約を終了し、イージーブランドのコラボプロダクトも打ち切りとなった。インスタグラムやツイッターも彼のアカウントを凍結した。こうした文脈のなかでの、パーラー買収。取引は年内に完了する予定だ。
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