「環境危機と闘う」パタゴニア、4300億円相当の株式を寄付 資本主義再考のロールモデルとなるか

Gene J. Puskar / AP Photo

 アウトドアブランド、パタゴニアの創業者イボン・シュイナード(Yvon Chouinard)は、自身が保有する全株式をトラストと非営利団体に移管すると発表。毎年売上の1%を寄付するなど、社会に貢献する経営方針で知られている同社だが、今回の動きは営利企業のあり方としても寄付のあり方としても、非常に大きなインパクトがある決断だ。その詳細とは。

◆「地球が唯一の株主」
 パタゴニアのウェブサイトで公開されている「地球が私たちの唯一の株主」と題されたシュイナードからのレター(英文和文)の冒頭は、「私はビジネスマンになりたいと思ったことはありません」という一文から始まる。彼からのレターには、環境危機対策のために多くの資金を投入するために今回の決断に至ったという旨が告げられている。同社は、これまでも環境負荷の少ない素材の使用、リサイクルやリユースの促進、消費者に対する「不買促進キャンペーン」など、スポーツ・アパレル業界において先進的な取り組みを実施してきた。また、従業員のために健康的な食堂や保育所を設置したり、毎年売上の1%を寄付したりといったような社会性の高い活動の先駆者でもある。同社は、社会や公益のための事業を行っている企業として、Bコーポレーション(B Corporation)認証も獲得している。

 「これで、私たちがどれだけ本気でこの地球を救おうとしているか、わかってもらえると思います」とシュイナードは言う。事業を売却してその売却益をすべて寄付する、もしくは上場するという選択肢も検討したものの、どれも良い選択肢ではなく、独自のスキームを選んだ。それは、会社の議決権付株式の100%を、今回新たに設立されたパタゴニア・パーパス・トラスト(Patagonia Purpose Trust)に譲渡し、無議決権株式の100%を環境危機と闘い自然を守る非営利団体ホールドファスト・コレクティブ(Holdfast Collective、以下コレクティブ)に譲渡するというもの。パタゴニア自体は営利企業として存続し、毎年、事業に再投資を行った後の余剰利益をコレクティブに対して配当金として分配することで、継続的に環境危機対策への資金提供を行う。シュイナードやその家族はパタゴニア事業の所有者という立場から完全に離れる。

Text by MAKI NAKATA