「当社のオレンジはヴィーガン向けではない」英スーパーが認めた理由

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 イギリスのスーパー大手テスコは8月21日、同社が販売するオレンジなどがヴィーガン向けでないことを公式に認めた。ヴィーガンは、動物由来の食品や製品、また製造過程で動物の搾取があった製品を一切消費しない主義を持つ人を指す。つまり、食品に限らず、革製品、絹やウール素材、また動物実験をした化粧品なども使用しない。一般的なベジタリアン(菜食主義者)よりも厳格な制限を守るため、ピュア・ベジタリアンやストリクト・ベジタリアンと呼ばれることもある。

◆理由はフルーツワックス
 なぜオレンジがヴィーガン向けではないという事態が起きたのか? その理由は蜜蝋とシェラックだ。蜜蝋はミツバチの巣を溶かしてできる蝋成分で、いわば天然のワックスである。シェラックは、インド、タイ、ミャンマーなどに生息する昆虫ラックカイガラムシが分泌する天然樹脂で、日本でもフルーツワックスの主成分として用いられている。

 フルーツワックスは果物の表面に光沢を持たせるとともに、鮮度を保存する効果を持つ。とくにオレンジやレモン、ライムなど柑橘類の表面に塗られることが多く、テスコで販売している商品も例外ではない。

 果物の持ちを良くするのは、食品廃棄物を減らすのに有効ではあるが、どちらも動物由来の物質なので、ヴィーガン主義者の許容範囲外となる。

 また、1ポンド(約454グラム)強のシェラックを作るためには約10万匹のラックカイガラムシが犠牲になるという報告もあり(『ヴィーガンフード&リビング』8/23)、動物搾取の観点からも許容できない。

Text by 冠ゆき