アフリカのトップベンチャーCEO、元社員らから告発 エコシステムの脆弱性も露呈
◆ジャーナリストと元社員による疑惑申し立て
今回問題となっている疑惑とは、4月12日にナイジェリア人フリージャーナリストのデイヴィッド・フンデイン(David Hundeyin)が、自身が運営するサブスタックのウィークリー・ニュースレター・サイト『ウエスト・アフリカ・ウィークリー(West Africa Weekly)』上で公開した記事と、フラターウェーブの元社員で、現在は別のフィンタック・スタートアップ、クレドレイルズ(Credrails)のCEOを務めるクララ・ワンジク・オデロ(Clara Wanjiku Odero)が自身のミディアムで公開した記事に示されているものだ。主な疑惑は、直接的には現職CEOに対してのものだが、フラターウェーブ全体の企業文化、しいてはナイジェリアの未熟なエコシステムにおける責任・アカウンタビリティーの不在という問題に対しての申し立てでもある。
フンデインは主に4名のフラターウェーブ元社員からの情報をもとに、いくつかの疑惑を明らかにしている。一つは、ストックオプションを与えられていた社員が、その権利を十分に行使できなかった、もしくは行使価格が低く設定されていたなどといった問題がある。ほかにも、GBがフラターウェーブ創業当時、雇用主であったアクセス・バンクを退社せずに、フラターウェーブの事業展開を進め、ケースに応じて、自身のアイデンティティを隠蔽して不正な取引を行っていたという疑惑。さらには、GBがグレッグという名の架空の人物をもう一人の株主として設定することで、自身の持ち株比率を不正に増やしていたことなども指摘されている。また、GBやフラターウェーブ幹部による性的暴行疑惑の問題もある。一方、元社員のオデロは、同社の退社後も主要取引の担当者として名前と連絡先を使われていたため、同社に対する疑惑捜査が入った際に迷惑と損害を被ったと主張している。
この疑惑に対して、フラターウェーブはフンデインが実際に記事を公開する直前に、疑惑記事が公開予定である情報を入手し、信頼回復のためのPR活動に奔走。同時に、記事公開後は「ブログ記事の内容は過去にも指摘されたことで、すでに対応済みであるか、間違った情報である」とコメントしている。また、2018年にCEOの座を退いた共同創業者の一人であるアボイェジは、GBに対する疑惑に対して、自身は無関係・無責任で、この一連のスキャンダルの被害者であるといったような態度を示しているようだ。
ナイジェリア、そしてアフリカの成長を代表するスター的存在のフラターウェーブに対する疑惑。投資家らによる十分なデューデリジェンスが行われていなかったのではないかという指摘もある。このスキャンダラスな疑惑は、いま世界の投資家がにわかに注目するアフリカのバブル状態のエコシステムの脆弱性を象徴するものだ。同時に、エコシステムがより健全で、アカウンタブルで、透明性が高いものへと進化するための機会かもしれない。フラターウェーブの今後の動きに引き続き注目したい。
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