マスク氏の脳チップ企業、「サル虐待」で告発「23匹のうち15匹死亡」

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 イーロン・マスク氏が率いる脳内チップ・人工神経企業のニューラルリンク社が、麻痺を抱えた人々が再び身体を動かせるようになる技術の開発を進めている。同社はサルでの動物実験が成功したとしてヒトでの臨床試験に進みたい意向だが、実験に使われたサル23匹のうち15匹が死亡していたことが発覚した。

◆サル虐待で倫理問題に
 同社の当面の目標は、身体を介さずに脳から直接コンピュータを操作することだ。脳に埋め込んだチップを使ってコンピュータとワイヤレスで接続する「ブレイン・コンピュータ・インターフェース」と呼ばれる仕組みを開発している。昨年4月には、サルの脳の両側に電極を埋め込み、卓球を模した70年代のビデオゲーム『ポン』を思考だけでプレーさせる動画を公開している。

 だが、ここまでには相応の犠牲があった。ニューヨーク・ポスト紙(2月10日)は、ニューラルリンク社が動物虐待を行っているとして、愛護団体による法的な異議申し立て手続きが行われていると報じた。米NPOの「責任ある医療のための医師会」が米農務省に提出した訴えによると、同社は2017年から2020年に行われた動物実験のなかで、複数のサルの頭に電極を埋め込んだ。実験後、手の指やつま先などの一部が欠損した個体が発見されており、ストレスあるいはトラウマによる自傷行為の可能性がある。ほか、脳に電極を埋め込むため頭蓋骨に穴を開けたサルが皮膚に感染症を生じ、最終的に安楽死させられたケースがあった。実験には計23匹のサルが用いられ、うち少なくとも15匹が死亡または安楽死させられている。

Text by 青葉やまと