中古衣料ECスレッドアップ、上場直後に株価が急上昇

Matt York / AP Photo

 3月26日に上場したスレッドアップ(ThredUp)社の株式は、上場直後に40%以上の値上がりを記録した。中古のレディース衣料や子供服のオンライン販売を手がける同社に対し、投資家から強い関心が寄せられていることが示された形だ。

 スレッドアップ社の上場に先立ち、同業のスタートアップとして、今年1月14日上場したポッシュマーク(Poshmark Inc.)の株式も注目を浴びた。投資家からの強い期待を受けたポッシュマークの株価は、上場直後に上場価格の2倍以上にあたる101.50ドルまで値を上げ、上場当日の同社の時価評価額は74億ドルに達した。しかしながら、その後、ポッシュマーク株は60%以上も値を下げている。

 スレッドアップ社からの声明によると、3月25日の午後に発表された同社株の上場予定価格は1株あたり14ドル。これは事前の推定価格の12ドル~14ドルの上限にあたる数字だ。その調達額は、約1億6800万ドル。同社の株式は 「TDUP」の略称で3月26日の昼前にナスダックのグローバル・セレクト・マーケットにて公開され、直後に18.25ドルの値をつけた。その日の終値は20ドル。その時点でのスレッドアップ社の時価評価額は、約18億5000万ドルとなった。

 スレッドアップ社の設立者の1人でCEOのジェームス・ラインハート氏は、「当社の上場株に対する市場からの高い評価に興奮しています。とはいえ、まだ1日が終わったばかりです。私たちの目の前には、はるかに長い、輝かしい年月が待っています」とAP通信のインタビューのなかで述べている。

 ラインハート氏によると、今回の株式上場で得た収益はアメリカ市場からヨーロッパ市場などへの販路拡大を見据えて、同社施設内のソフトウェアに対する投資に使用される。

 今回のスレッドアップ社の株式上場は、新型コロナウイルスのパンデミックの期間においても堅調な推移を見せるリセール市場を象徴する出来事だ。この背景には、オンラインマーケットでの購入客の急増があり、また、その顧客らの間での環境意識が高まっていることも、中古衣料のリセール市場に注目が集まる好材料となっている。スレッドアップ社からの委託を受けてグローバルデータ社が実施した調査によると、リセール市場の市場規模は2019年の時点で280億ドル規模に達し、これがさらに、2024年までには640億ドル規模にまで拡大する見通しだという。

 2009年に設立されたスレッドアップ社は、カリフォルニア州オークランドに本社を置く。同社は事業について、「価格設定、商品化計画、商品の受注から配送までのフルフィルメント、支払い、カスタマーサービスの管理など、すべてを一貫して行える、売り手にとってのマネージド・マーケットプレイス」と謳っている。このビジネスモデルにおいては、販売者獲得のために直接的な資金を投じる必要がない。にもかかわらず、質の高い商品サプライヤーを引き込むことが可能なのだという。

 スレッドアップを利用する販売者は、「クリーンアウトキット」と呼ばれる梱包発送用のキットを注文して受け取り、必要事項を記入した上で、同社送料負担の発送ラベルを貼って同社に商品を送る。そしてそれを受け取ったスレッドアップ社が、実際のリセールの手配を行う仕組みだ。それとは対照的に、ポッシュマーク社の手がけるリセールのビジネスモデルは、ユーザー同士が直接的に売買と情報のやりとりを行うソーシャル・マーケットプレイスだ。

 目下、スレッドアップその他のサードパーティーのリセールサイトにとっての手強い競合相手は、ブランド自身が新たに始めるブランド直営のリセールサイトである。この両者の競争は、日増しに激しさを増している。リーバイス、パタゴニア、アイリーン・フィッシャーなどの著名なブランド名を冠したリセール事業を展開するトローヴ社CEOのアンディ・ルーベン氏は、今後5年間のうちに、すべてのブランドがブランド独自のリセール事業を持つようになると予想する。同氏によれば、中古のブランド製品を購入する顧客層の60%が新規の顧客であり、そのうちかなりの割合が、今後1年以内にブランド直営事業から新たなアイテムを購入するという。

 ルーベン氏は、「中古衣料のeコマースは、すべてのブランドにとって素晴らしい販売ツールだ。多くのブランドが、ポッシュマークとスレッドアップの株式上場後の動向を注視している」とコメントしている。

 その一方で専門家らは、サードパーティーの販売サイトとブランド直営の再販サイトは、共存・共栄が可能だとみている。

 立ち上げ以来、グッチからギャップにいたるまで多様なブランド商品を扱うスレッドアップ。100カテゴリー・3万5000ブランドの商品を展開し、個性あふれる中古衣料を1億点以上販売してきた。同社の施設は、最大550万点のアイテム保管能力と、1日あたり最大10万アイテムの販売・処理能力を持つ。2020年12月31日の時点で、120万の買い手と42万8000の売り手がアクティブな状態で存在している。また、同社はウォルマートをはじめとする21の小売事業者と提携している。

 米国証券取引委員会に提出された資料によると、スレッドアップ社の2020年の売上高は、2019年比14%増の1億8600万ドル。純損失は、2019年の3820万ドルから2020年の4790万ドルへと拡大した。

 APの取材に対しラインハート氏は、同社の今後の収益見通しに関する資料の提供は行わず、「非常に大きな市場機会が開けています」と述べるにとどめている。

By ANNE D’INNOCENZIO AP Retail Writer
Translated by Conyac

Text by AP