ボーイング、20年赤字1.2兆円 大型機777Xの遅れが追い打ち
ボーイングは2020年第4四半期決算で84億ドルの損失を計上し、かつてない厳しい財政状況で1年を終えた。新型コロナウイルス感染拡大による航空機の需要低迷や、長距離飛行が可能な大型旅客機の出荷遅れも、さらなる追い打ちになったと発表した。
この2年間、ボーイングは問題を抱える737マックスをめぐるトラブルの対応に追われてきた。しかしながら、1月27日に発表された第4四半期決算のうち損失額として最大規模となったのは、新型で超大型の777Xにかかる税引き前費用の65億ドルである。
これらの損失により、2020年通期としての決算額は過去最悪の119億4千万ドルの赤字となった。
デビッド・カルホーン最高経営責任者(CEO)はアナリストとの電話会談のなかで、「2020年はほかの年とはまったく異なっています。私たちの世界、航空機産業、当社のビジネス活動、そして地域社会はかつてない困難に直面しました。そしていまもなお、私たちはその最中にいます。顧客である航空会社を含め、業界全体にとって非常に大変な状況が今後6~9ヶ月にわたって続くでしょう」と述べている。
1月27日のボーイング株価は4%ダウンの194.03ドルに下落した。
ボーイングの最高益が100億ドルに達したのは、わずか3年前のことである。2019年から2年間損失が続いたものの、2021年には収益性を取り戻すとアナリストは予測する。しかしこれも、新型ウイルスの感染拡大が早い段階で収束し、旅行の回復が見込めるかどうかにかかっている。
金融サービスのエドワード・ジョーンズ社でアナリストを務めるジェフ・ウィンダウ氏は、「ワクチンの展開次第で状況も変わると考えます。いつになれば、空の旅が快適であると旅行者に安心が戻るのでしょうか。航空会社から航空機の注文が増え、出荷が開始されるのはいつでしょうか」と話す。同氏によると、2021年下半期には、ボーイングの収益力ははるかに回復するはずだという。
この2年間、ボーイングの新規受注は低迷している。346名が犠牲となったマックスによる2度の墜落事故を受け、同機が世界中で運航禁止となったことや、航空業界に壊滅的な状況をもたらした新型ウイルス感染拡大が要因として挙げられる。
出荷数もまた減少しており、ボーイングは収益低下にあえいでいる。同社が発表した第4四半期の売上高は15%減の153億ドルに落ち込んだ。
ボーイングが第4四半期に出荷した商用機は59機に留まり、ヨーロッパの競合社エアバスの225機とは隔たりがある。2020年後半、ボーイングは787ドリームライナーの出荷を製造上の問題により一時停止した。2021年3月までに出荷の再開は見込まれていない。
ボーイングは777Xをめぐる問題も抱えている。大型の777シリーズのなかでも長距離飛行が可能な同機は、新型エンジンと、限られたスペースしかない多くの空港ゲートに対応するための折り畳み式ウィングチップを備えた複合材主翼が特長である。65億ドルという開発費は、航空機の耐用年数に対して見込まれる利益が低いことを示している。
ボーイングは1月27日、777Xの出荷開始は2023年後半になる見込みだと発表した。これは当初の計画よりも3年遅れ、さらに半年前に推定した時期よりも1年遅い。マックスの事故を受け、新規に制定された航空機の承認基準が厳格化されたこと、また、新型ウイルス流行により海外旅行への需要が激減している状況が理由として挙げられた。
短・中距離飛行に使用されることの多い中型旅客機737マックスは、世界各国で20ヶ月間敷かれていた運航禁止措置が解かれ、運用が再開したばかりだ。アメリカン航空などの航空会社5社がすでにマックスの運航を再開しており、2020年12月初め以降の運航数は2700便を超えている。
1月27日、ヨーロッパの規制当局はマックスの運航再開を承認した。禁止措置以前は航空機市場として最大規模であった中国からの承認はまだ得ていない。カルホーンCEOは、2021年前半には全世界からの許可が得られる見通しだと話す。
シカゴに本拠地を置くボーイングは1月、マックスの事故に対する刑事訴追を避けるために25億ドルを支払うことを合意した。さらに、2名の元従業員が航空機の安全性について、規制当局を意図的に欺いたことを認めた。ボーイングから航空会社への補償としてすでに支払われている費用が大半を占めるその合意内容について、事故の犠牲者家族は不満を訴えている。
金融市場の分析を行う「ファクトセット」の調査によると、ボーイングの株価は、一株当たり14.65ドルの下落となり、金融市場が予想していた1.64ドルを大きく下回った。777Xの損失計上以外にも、マックスをめぐって司法省と合意した7億4400万ドルの支払いなど、支出を伴う問題はほかにもいくつか残されている。
By DAVID KOENIG AP Airlines Writer
Translated by Mana Ishizuki