広がる選択肢——サブスクリプション型ジャーナリズムの可能性

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◆ジャーナリストに寄り添う『サブスタック』
 インスタグラマーやYouTuberといった、普通の個人が自らのスキル・タレント・人望で稼ぐという、インターネット時代ならではといえる職業が一般化するなか、ジャーナリストにとっての選択肢も増えている。2017年、サンフランシスコで開始した、ライターのための有料メールマガジン配信プラットフォーム『サブスタック(Substack)』は、誰でも利用できるサービスだが、最近大手メディアに所属していた著名ジャーナリストらが、次々と独立して『サブスタック』を利用し始めたことで、話題を呼んでいる。

 ライターは、『サブスタック』に無料で登録して始められる。登録すると有料メールマガジン配信のためのウェブサービスが利用できる。ライターは、自ら任意のサブスクリプション価格(月間もしくは年間講読料)を設定し、自分の記事を気に入って登録してくれた読者に対して、好きな頻度でメールマガジンを配信できる。講読料は、すべてもしくは一部の記事に対して無料にすることも可能だ。『サブスタック』の運営側は、一番価値がある記事を無料公開し、オーディエンスを広げることを推奨している。

 読者側のメリットとしては、SNSのアルゴリズムやセンセーショナルな記事タイトルなどに誘導されることなく、自分が価値を感じる情報に対価を支払い、受け取ることができるという点だ。たとえば、ツイッターでフォローしているジャーナリストのメールマガジンを受信することができる。

 12月現在、最も多くの講読料を稼いでいるメディア(ライター)は、The Dispatchという政治、政策、文化に関連した報道やコメンタリーを配信する保守派メディアである。正確な数は公開されていないが、トップライターたちは、数10万人の購読者を持っているようである。

 価格設定は、専門的な内容でなければ、ひと月5ドル〜10ドルほどが目安とされている。『サブスタック』側は、売上の10%とカード手数料をライターに課金する。ライターに売上がなければ、課金はゼロだ。『サブスタック』の概算シミュレータによると、たとえば、800人の購読者に毎月7ドルを課金した場合、ライターは毎月4440ドル(約46万円)の報酬を獲得することができる。無名のライターが800人の有料購読者を獲得することは容易いことではないが、『サブスタック』に参加するにあたっての利用料金が発生しないため、ライターにとっては試す価値があるかもしれない。また、『サブスタック』はライターに向けた有用な情報やメンターサービス、編集、法的アドバイスなどを提供し、独立ジャーナリストたちをサポートするための体制を充実させている。

Text by MAKI NAKATA