スタートアップ注目の家具レンタルサービス ミレニアル世代に狙い
ザカリア・モハメッド氏のリビングルームに置かれているのは、借り物ばかりだ。
彼はリビングにあるソファやサイドテーブル、キッチンワゴン、ダイニングテーブル、そして4脚の椅子に、月200ドルを支払っている。しかし、「それだけの価値がある」と27歳のニューヨーカーは言う。レンタルなら引っ越しの際も、大きな家具の運送や収納スペース確保に頭を悩ませることはない。実際、彼はこの12ヶ月で2度も転居している。家具レンタルのスタートアップ、フェザー(Feather)なら、別の家具に交換することも可能だ。
ソフトウェア会社でソーシャルメディアマネージャーを務めるモハメッド氏は、「大きなソファに縛られるのは嫌だ」と話す。彼はパートナー、そして犬のレミーと暮らしている。
フェザーやファーニッシュ(Fernish)といった家具レンタル企業がターゲットにするのは、大きな買い物や、重い家具を運ぶことを敬遠するミレニアル世代だ。彼らは利便性のための出費を惜しまない。これも最近人気のレンタルカルチャーの一環で、女性向けにデザイナーブランドのファッションアイテムを展開するレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)や、個々の番組や映画、音楽を購入するのではなく巨大なカタログから選ぶ形のストリーミング配信サービスを提供するネットフリックスやスポティファイは、その代表格だ。
ペンシルベニア大学ウォートン校でマーケティングについて研究するトーマス・ロバートソン教授はサービスを活用する客層について、「彼らは転居も転職も多い。家具を背負い込もう、とは思わないでしょう」と話す。
家具レンタル会社がターゲットにするのは、1,100ドルのオレンジ色のラブソファを月46ドルで、980ドルのレザー製のベンチを月41ドルでレンタルする、都市の高所得者層だ。家具自体はイケアよりワンランク上といったところだ。
昨年、オンライン家具レンタル会社オリバースペース(Oliver Space)を共同設立したチャン・パーク氏は「私は現在32歳で、5ヶ国の12都市で暮らしてきました。引っ越しの回数は25回にのぼります」と話す。彼は常に安い家具を買っては、処分することを繰り返してきたという。転機は、シンガポールの家具付き賃貸アパートに移った時だ。
「あんな風にくつろげたのは、大人になって初めてだったかもしれません」とパーク氏は言う。
こういった家具レンタルのスタートアップは一部の沿岸都市にあり、ユーザ数はまだ少ないが、今後の成長を目指している。彼らが提供する家具はクレイト&バレル(Crate & Barrel)やウエストエルム(West Elm)のほか、比較的小規模のブランドの製品だ。
家具以外の家庭用品をレンタルする人もいる。最近、レント・ザ・ランウェイはウエストエルムの枕やキルトの取り扱いを開始した。イケアはアメリカだけでなく、スイスやベルギーなどでも試験的にレンタルサービスを展開している。
1990年代後半から2016年までに生まれた世代を専門に研究する企業、ジェネレーションZプラネットを立ち上げたハナ・ベン・シャバット氏は、「『人生は移ろいやすいもの』と考える世代にとって、レンタルは理にかなっているかもしれない」と話す。
現代の若者は結婚もマイホーム購入も前世代より遅く、転居回数も年配者より多い。ただミレニアル世代を見ると、前世代の同時期よりも移動が少なく、アメリカ人全般としては転居の機会は減少している。
クラリッサ・ライト氏はニューヨークからロサンゼルスへ転居する際、家具の運搬費用を計算すると3,000ドルだった。そこで彼女はそのほとんどを売り払い、2ヶ月間ヨーロッパ旅行を楽しんだ後、新天地でソファ、ベッド、マットレス、キッチンワゴンなどの家具を月額255ドルでレンタルすることにした。フェザーは1日ですべての製品の配送と組み立てを済ませてくれたという。
ファッションおよび美容ブランドでマーケティング・コンサルティングを務める28歳のライト氏は、家具を交換したり、追加したり、新しいアパートや街に移ったりすることができると話す。だがいまのところ彼女は今後のことを決めていない。
「先のことはあまり考えていません」と彼女は言う。
レンタルシステムは確かに割高だ。過去には、家具レンタルシステムは搾取的であるという批判の声も上がっている。レントAセンター(Rent-A-Center)のように、冷蔵庫やソファを即金で買う余裕のない低所得者をターゲットに、相場よりも高額料金を請求する企業もある。
家具レンタル企業のなかには会員料金制度を取るものもあり、支払い遅延や破損時にはペナルティ料金が課されることも。一方で、レンタル料の総額が販売価格に達した場合、家具を買い取ることも可能だ。ウエストエルムやクレイト&バレルと同じ価格設定だが、セールがあれば、直接店舗から通常よりも安く購入できる。
アメリカの国民生活センターのマーゴット・サンダース上級顧問は、「これがソファを買う最善策であると考えるのは誤りです。レンタル料金は、あくまでレンタルの利便性への対価だと認識すべきでしょう」と言う。
By JOSEPH PISANI AP Retail Writer
Translated by isshi via Conyac