これが「ユニークな日本」で最も売れた車か……ホンダ N-BOXへの海外の反応は?

N-BOX/N-BOX Custom

♦︎価格だけではない、人気の秘密
 人気の理由について豪カーズ・ガイド誌(1月13日)は、その手ごろな価格が大きく影響していると見ているようだ。「N-BOXがこれほど人気を集める理由の一端はその価格設定にある」と述べ、税込141万1300円からという希望小売価格を紹介している。軽としては最も安価な価格帯というわけではないが、それでも平均的な普通車よりは低価格と言えるだろう。また、記事では触れられていないが、当然税制面でも有利だ。

 さらに、単に価格を抑えているだけでなく、限られた車内空間を最大限に生かせるよう工夫が凝らされている。トップ・ギアは「N-BOXは、居住空間を最大化するために、なんと言うべきか……そう、ボックス型を採用している」と、そのユニークな形状をイギリスの読者に説明している。記事ではさらにホンダのウェブサイトからユーザーの声を拾って紹介しており、ユニークな形状ながら実用性の高さが日本の利用者に受け入れられていることが伝わってくる内容だ。たとえばフロントガラスはオプションで角度がついたものを選択することができるが、ほぼ直立に近い標準タイプのものを非常に気に入っているというユーザーの声が紹介されている。また、マイナス15度の寒冷地でシートヒーターに助けられたという感謝の声もピックアップされている。

 一方、海外の自動車ファンたちの着眼点としては、助手席側フロントピラーの内側に取りつけられた小型ミラーに注目が集まっている。これらはサイドビューサポートミラーと呼ばれるもので、自車の左前下方の様子を確認でき、日本の狭い路地での行き違いや駐車の際に役立つものだ。カー・スクープ誌の読者からは、バックの際の死角を補う後方死角支援ミラーと併せて、「これは非常にクレバーなデザインだ」とのコメントが寄せられている。単に安価なだけでなく、日本の道路事情を汲んだ独特の仕様が関心を呼んでいるようだ。

♦︎ユニークな日本の軽
 カー・スクープ誌は、「日本の自動車市場は、そこにしかないモデルが数多く出回っているため、おそらく世界で最も独特なものだ」と述べている。こうした日本市場用モデルの存在は海外の自動車ファンの間でも広く知られており、JDMスペシャル(日本国内市場専用車)と呼ばれている。

 海外でも注目を集める軽自動車だが、では実用性と省スペースを兼ね備えた軽自動車が海外で流行りそうかというと、残念ながらそれは難しいのではとの意見が主流のようだ。カー・スクープに寄せられた読者の声として、日本の自動車企業が軽の輸出を考えていないのは妥当に思える、とのコメントが見られる。たとえばアメリカでは全長4600ミリ前後のトヨタ RAV4でさえ「コンパクトな」SUVと受け止められており、フォククスワーゲン ゴルフに至っては「大人には狭すぎる」との厳しい意見が現地では出ているという。このため、全長わずか3395ミリのN-BOXが欧米の市場に食い込む余地があるかは疑問だ。ただし小型のルックスは海外の自動車ファンの好奇心をくすぐるようで、「かわいらしい」といった意見や「日本の小型車の運転感覚がどういうものかずっと不思議に思っている」といったコメントが同誌記事に対して寄せられている。海外に輸出されることは当面なくとも、ほかでは見られない愛らしいクルマの形態としてこれからも話題になることだろう。

Text by 青葉やまと