ウーバー、車内音声を録音 ブラジル、メキシコで 安全対策を強化
配車サービスを提供するウーバーは、安全に対する取り組みを強化し、利用者の心証を改善するために、ブラジルとメキシコで乗客とドライバーが乗車中に交わす音声会話を録音できるようにする。
同社は、両国の各都市で12月にこの音声録音の試験運用を開始する予定である。最終的にはアメリカを含め、他の国の市場でも車内の会話の録音を開始したい意向だ。しかし、その具体的な時期はまだ決まっていない。
ユーザーがすべての音声の録音を了承すれば、録音が開始される。了承しない場合は、録音を行わずに目的地まで乗車することになる。録音の内容は、乗客またはドライバーのスマートフォンに保存されるが、プライバシー保護のために暗号化される。そのため、乗客もドライバーも、録音内容を聞くことはできない。そして何か問題が発生した場合は、乗客やドライバーがウーバーに報告して音声録音を共有することになる。録音内容の暗号化キーは同社が保管している。
この録音機能が、乗客やドライバーを暴力的な行為から守るのに役立つかどうかはわからない。しかし、この音声録音がドライバーと乗客の間で発生するやっかいな事案の責任の所在を明確にしてウーバーの損失を軽減するため、同社にとってはメリットとなる。
トライデントパブリックリスクソリューションズの副社長兼新規リスク専門家のトム・リッカート氏は、「たとえば、ドライバーと乗客の言い争いが怒鳴り合いの喧嘩に発展してしまい、両者とも互いに口汚く罵り合っている場合、録音された音声は、ウーバーがこの事案の原因の所在を特定してドライバーに対するあらゆる種類の損害や苦情を軽減することになる。たぶん、音声を録音してもいざこざが起きるのを防ぐのは無理だろう。だが、次からはひどい言い争いにならないよう、何をすればいいか見直すのには役立つだろう」と語る。
ウーバーは、この新しい機能は同社の説明責任を促し、安全担当チームが必要なときに断固たる行動を取るのに役立つとしている。
一方でこの録音機能は、ドライバーや乗客の認知や承諾なしに会話を録音できてしまうという、プライバシーの問題も引き起こす。
「これはデジタル録音だ。サーバー上のどこかに音声ファイルが存在することになる。確かに暗号化は可能だが、ハッキングされ得る。だから、この音声録音ファイルを制御できない個人には、プライバシーの懸念がつきまとう」とリッカート氏は言う。
ウーバーは、安全に関わる問題に苦慮しており、一部のドライバーが乗客を襲って性的暴行を加えたという告発を受けている。また、ドライバーの採用の過程が不透明で履歴の確認も十分ではないとする訴訟の渦中にも置かれている。ウーバーは指紋を用いた身元調査を実施していない。従来のタクシー会社であれば、ドライバーの採用時にはそのような身元調査をほとんどの場合実施している。
サンフランシスコを拠点とするウーバーのドライバーも強盗襲撃の犠牲者となり続けてきている。ブラジルとメキシコでは、乗客は現金で利用料金を支払うことができるため、事件が起きる危険性が高くなる。同社の連邦政府への報告書によると、ブラジルでは、ウーバーの乗車サービスを提供中にドライバーが強盗に襲われ、致命的な暴行を受けた。
ウーバーは今年、安全に関する報告書を発表して、アメリカ国内で発生した性的暴行およびほかの安全に関わる事案についてのデータを提供する予定だ。
同社は、過去1年間、安全性に関するさまざまな機能を自社のアプリに追加してきた。それらの機能には、乗客が予約した車両に確実に乗り込むことを支援する機能や、アプリ内から911(緊急通報)へ連絡し、最初に通報を受けた担当者と車両の位置情報を自動的にシェアする機能などが含まれている。
By CATHY BUSSEWITZ AP Business Writer
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