活気づくAirbnb 低下するホテル宿泊料、客室稼働率への影響はいかに

Creative Images / Shutterstock.com

著:Tarik Dogruフロリダ州立大学、Assistant Professor of Hospitality Management)

 民泊仲介サイト最大手のAirbnbは2008年に創業して以来、飛躍的な成長を遂げてきた。近く株式上場することが見込まれており、時価総額は世界のホテル企業の中でもトップとなるだろう。

 実際に、アメリカの消費者が昨年Airbnbに支払った宿泊費は、創業100年を誇り世界第2位のホテルチェーンであるヒルトンよりも多い。

 サービス業におけるホスピタリティの研究を専門とする筆者は、Airbnbの台頭によるホテル業界への影響とその脅威について考察したい。

◆飛躍的な成長
 共同研究者であるマカランド・モディとコートニー C. ジュスと共に、急成長するAirbnbがホテル業界に与えてきた影響について、アメリカの主要10都市において調査を行った。2008年から2017年にかけて、ボストン、シカゴ、デンバー、ヒューストン、ロサンゼルス、マイアミ、ナッシュビル、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトルで収集したデータより、宿泊料金、売り上げ、客室稼働率の3点に焦点を置き、その指標を分析した。

 これら10都市においてAirbnbが提供する物件は、部屋を間借りするものから一軒家を丸ごと借りるものまで、たった51件だった創業初年度から5年後には5万件を上回り、さらに2017年には50万件を超えた。

 手ごろな価格で「他人が住む本物の家」に滞在するという、こだわりのある体験を求める消費者が増えていることも、Airbnbの成長を後押ししてきた。

 そしてもう1つ重要なポイントがある。創業後10年間、Airbnbは法規制に縛られることなく、柔軟性をもって、そして容易に新規物件を増やすことが可能であった。

 行政の取り締まりが厳しくなり状況が変わりつつあるとはいえ、Airbnbが規制対象外であったことはホテル業界との競争上大きな利点であったといえる。実際、アメリカ国内の都市で一般的に導入されている規制の下では、ホテル新設には数年を要し、許認可や安全規定の順守が義務付けられ、さらに税金も多く課せられている。

◆甚大な影響
 Airbnbが得たこのような利点によって、ホテル業界は売り上げや宿泊料金、客室稼働率において、甚大な影響を被ってきたことが研究によって明らかにされている。

 具体的にいうと、Airbnbが提供する物件が1%増加するごとに、ホテル1部屋当たりの平均売上が0.02%減少する。影響力は小さいように見えるが、Airbnbの年度毎の驚異的な成長率をよく考えてほしい。創業以来の増加率が平均して2倍であることを考慮すると、ホテルの売り上げが1年で2%減少していることになる。

 データの性質上、この分析を金額に換算することは容易でないが、ニューヨーク市のデータをかみ砕くと、エアビーアンドビーの影響で生じた機会損失は2016年のみで3億6,500万ドル(約396億円)にのぼる。

 平均宿泊料金や客室稼働率についても、売り上げと同様に影響は生じているが、その度合いはまだ小さい。Airbnbの物件数が1%増加するごとに、宿泊料金は0.003~0.03%減少し、客室稼働率は0.008~0.1%低下している。

◆「高級路線」への脅威
 Airbnbは当初、平均客室料金が下位20%を占める格安ホテルへの影響を危惧されていた。しかし、上位15%の高級ホテルへの影響もまた甚大であることが、研究によって示された。

 このことは、Airbnbが、価格帯を問わずユニークな体験を提供し、成果を得てきたことを示唆する。そして最近では、「高級感」を体験できるデザイナーズ住宅での宿泊や、山小屋やボートハウス、あるいはツリーハウスのようなユニークな宿泊施設など、あらゆる選択肢を揃えている。そしてこれらにはいずれも高めの価格帯が設定されているようだ。

 また研究により、Airbnbのサービス拡大によって、中堅クラスや独立系のホテルが被った影響は少ないことが明らかになった。おそらく、同価格帯であることが理由だろう。そして、チェーンホテルにはないこだわりを求めて独立系ホテルを好む宿泊客にとって、Airbnbへの転向が気の乗らない選択肢であることも、理由の1つとして挙げられる。

◆今後も続くAirbnbによる脅威
 以上の結果を踏まえると、Airbnbは、ホテル業界から一部のシェアを獲得したようだ。では、このような脅威的な成長は今後も続くのだろうか。

 Airbnbは世界中に物件提供し続け、成長していく。そしてホテルチェーンに対する挑戦は今後もずっと続く、と筆者は確信する。

 Airbnbが提供する物件やシェアハウスなど、賃貸ハウスを規制する取り組みが行われており、このことで同社の成長に歯止めがかかることも起こり得る。一方で、このような宿泊施設をどのように取り締まるべきか、という議論に対する結論は容易には出てこない

 つまり、ホテル経営者は今後もAirbnbに戦々恐々するのだろう。

This article is republished from  The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by Mana Ishizuki

Text by The Conversation