墜落したライオン・エア機、レコーダーから過去の飛行での問題が発覚 対気速度計で4度
墜落したライオン・エア機から回収された「ブラックボックス」と呼ばれるデータレコーダーに、墜落時を含め、最後の4回のフライトにおいて対気速度計が正常に機能していなかったことを示すデータが残されていた。事故調査官らがこの発表を行ったのは、11月5日、インドネシア当局が主催した会合の場で悲嘆にくれる乗客家族らがライオン・エアの設立者と対面した、そのわずか数時間後のことだった。
ジャカルタを離陸した直後にジャワ海に墜落し、乗客乗員189人全員が犠牲となったライオン・エア機の墜落事故。ソエルジャント・チャジョノ国家運輸安全委員長は、今回事故を起こした機体が、10月29日の最後のフライトを含め、あわせて4度のフライトでそれぞれ同様の問題を起こしていたと述べた。
この機体では、バリ島のデンパサールからジャカルタに向かった過去のフライトでも、不安定な速度と高度が長時間にわたって記録されていた。「ブラックボックスの解析から、対空速度、つまり飛行速度に関する技術的問題がはっきりと認められました」と、チャジョノ氏はその後の記者会見で語った。
「ブラックボックスのデータによれば、デンパサール・ジャカルタ間のフライトに先立つ2度のフライトでも、同じ問題が発生しています。ブラックボックスには、あわせて4回のフライトにおいて、対気速度計に問題が記録されていました」
チャジョノ氏はまた、インドネシアの事故調査官と航空機メーカーのボーイング社、それにアメリカ国家運輸安全委員会を加えた三者が共同で、ボーイング737 MAX 8型機の対気速度計問題に関する、より専門的な調査を予定しているとも語った。
「緊急性のある調査結果が出た場合には、すみやかに各航空会社と航空機メーカーに伝達します」と同氏はコメントした。
一方ライオン・エア側は、バリ島からジャカルタへの飛行時に問題が発生したものの、その後、機体の技術的問題は解決されていたと、以前にコメントを出している。
事故調査官のヌルカヨ・ウトモ氏は、今後の調査にあたっては、就航後わずか2ヶ月だったその機体に関してどのような問題報告があったのか、また、部品の交換も含めた修理記録や、修理後にどのようなテストを経て機体の耐空性能に問題なしと判断されるに至ったかなど、事故機の保守記録を精査する必要があると述べた。
「現在、事故原因を調査中です」とウトモ氏。「墜落の原因が、計器、測定機器やセンサー、コンピューターの不具合などにあるのかどうかは、現段階では不明です。これからそれを解明していきます」
乗客家族らとの会合のなかで、チャジョノ氏は、事故機のフライトデータレコーダーからダウンロードして得られた情報は、「事故に至った最後のフライトでは離陸直後から機体の速度と高度が不安定だった」というその他の報告とも一致している、と述べている。コックピットのボイスレコーダーの所在については、現在もまだ捜索中だ。
事故機の捜索と事故調査の責任者、運輸大臣ブディ・カルヤ・スマディ氏が主催した乗客家族と当局者との会合の中では、ライオン・エアの設立者の1人であるルスディ・キラナ氏は、特に当局から発言を求められることはなかった。
しかしながら、怒りにかられた乗客の家族から「責任者はどこだ」との強い声が上がると、キラナ氏は自ら立ち上がって頭を垂れた。ライオン・エアは、ルスディ・キラナ氏と弟のクスナン・キラナ氏によって1999年に設立された。
「ライオン・エアは過ちを犯しました」と、ある乗客の父親は発言した。今回事故に巻き込まれた彼の息子のシャンディ・ジョアン・ラマダン氏は、事故機の目的地であったバンカ島で検察官を務めていた。
「ルスディ・キラナ氏とその関係者には、もっと真摯な対応を希望します。事故発生以来、ライオン・エアからは直接こちらに何の連絡もありません。私は息子を失いました。にもかかわらず、ライオン・エア側からは、私たちに対する謝罪の言葉は何もありませんでした」
会合の終了後、キラナ氏は記者たちからの質問を避け、足早に会場を立ち去った。
乗客の家族の多くが、今現在も、行方不明の家族が発見・身元特定されるのを待ちながら、苦しい時を過ごしている。警察の医療専門家の元には、ここまで約140人相当の遺体の各部が到着したが、そのうち身元が特定できたのは現在14人にとどまっている。
事故に先立つ10月28日、バリ発ジャカルタ行きのフライトにおいて、離陸直後に機体が急降下し乗客らがパニックになるなど、今回事故を起こした同じ機体で問題が発生していた。それにもかかわらず、その後なぜ次のフライトが可能と判断されたのか。乗客の家族らからは、そこの部分を疑問視する声が上がった。
「ライオン・エアは、機体の問題は解決されていたと言いました。しかし、本当に問題は解決されていたのですか?」と、息子が事故機に乗っていたというバムバン・ スカンダル氏が疑問を投げかけた。「もしそれが虚偽であれば、担当した技術者の責任が問われます。彼らは法の裁きを受けるべきです。なぜなら彼らは、事故直前のフライトで問題が発生したあと、その機が再び離陸しても問題ないと明言したのですから。インドネシアでこのような航空機事故を二度と起こさないために、そのような悪しき技術者は、法によって罰を受けなければなりません」
国家運輸安全委員長のチャジョノ氏は、微小な破片が大量に発見されたこと、また、事故機の破片の発見エリアが比較的狭い範囲にとどまっている事実から、事故機が非常に速い速度で海面と接触したことがうかがえるとの見解を示した。
「海面に達するまでの時点では機体に損傷はなく、空中での爆発もありませんでした。事故機のエンジンは、海面に接触した時点ではまだ高い回転数で機能していました。すべてのタービンブレードが失われたことからも、そのことが示されています」
今回のライオン・エア機の墜落事故は、スマトラ島北部のメダン近郊でガルーダ・インドネシア航空機が墜落し、234名が死亡した1997年の墜落事故以降、インドネシアにおける最悪の航空機事故となった。また今回の事故以前には、 2014年12月、スラバヤ島からシンガポールへ向かっていたエア・アジア機が海上に墜落、乗員乗客162名が死亡する事故が起きている。
インドネシアで最も新しい航空会社の1つに数えられる、目下急成長中のライオン・エア。同社は現在インドネシア国内外の数十都市をカバーしており、6億以上の人口を擁する成長市場の東南アジア地域で積極的にビジネス展開中だ。
By NINIEK KARMINI, Associated Press
Translated by Conyac