フェイスブック、「組織的な工作」の疑いでロシアやイラン関連のアカウントを大量削除

AP Photo / Marcio Jose Sanchez, File

 フェイスブックは、誤解を招く政治行動に関与したとされる数百件のアカウント、団体、ページを特定し、使用を停止した。同社が3週間前に大々的に発表した取り締まりの数より、今回はそれをはるかに凌ぐ規模だ。

 フェイスブックは21日、政治に関する記事をシェアするなど、「組織的な工作行為」があったとして、ロシアやイランと繋がりのある652件のページ、団体、アカウントを削除した。

 ロシアの工作員が2016年の大統領選挙に介入しようとし、フェイスブックのプラットフォームを使って実際に政治に影響を及ぼしたことを受け、同社は昨年以降、プラットフォームにおける取り締まりを強化した。その他のソーシャルメディアネットワークも、同様の措置を講じており、偽の政治情報を拡散するキャンペーンについて、新たな証拠が発見されている。

 フェイスブックは7月末に、ロシアのアカウントを32件摘発したが、そのほとんどが11月の中間選挙に向けた、アメリカの政治活動に関するものだった。しかし今回の場合、偽アカウントと見られる一連のアカウントは、アメリカの外交政策及び対中東政策への介入を意図していたと思われる。

 フェイスブックが発表を行った直後、ツイッターもまた「組織的な工作」があったとして284件のアカウントを停止。その多くが、イランで作成されたアカウントと思われる。マイクロソフトもその前日に、ロシアでおそらくスパイ活動の一環として、アメリカの保守系ウェブサイトを偽装するという活動が行われていたことが、新たに発覚したと報告している。

 フェイスブックは、まだすべての投稿を審査できていないとし、国の支援を受けた工作員らが工作活動に用いた手法や、その理由については言及を避けた。しかしアメリカ、イギリス政府に加え、イランに対する制裁が実施されていることを考慮し、アメリカ財務省及び国務省にも報告したとしている。

 フェイスブックのCEOを務めるマーク・ザッカーバーグ氏は、21日午後に記者らを集めて急遽開催された電話会議で、「まだ把握できていないことがたくさんある」と述べた。

 ザッカーバーグ氏は、「あらゆる手段を使ってサービスを悪用しようとする人は、今後も出てくるだろう……今や、その中には国家も含まれる」と言う。同氏は工作活動について、「高度かつ十分な資金を投入した活動であり、終わることがない」と述べている。

 一部の工作活動をフェイスブックに警告したサイバーセキュリティ会社、ファイア・アイは、これについて「アメリカの利用者、アメリカの政治以外にも広く広がっているため、2018年にアメリカで実施される中間選挙の結果を左右することだけを目的としているようには思えない」と述べている。

 21日朝に実施した今回の取り締まりについて、フェイスブックは、4件の調査を受けて実施したものだとしている。3件はイラン、1件はロシアに関する調査だ。

 1件目の調査は、フェイスブックとインスタグラムに複数のアカウントを開設し、15万5千件のアカウントにフォローされている「Liberty Front Press」と呼ばれる団体を対象としたものだ。フェイスブックは、登録しているウェブサイトやIPアドレス、管理アカウントから、同団体にはイランの国営メディアが関与していたとしている。同社によると、2013年に最初のアカウントが作成され、中東、イギリス、アメリカの政治に関する内容を投稿していたが、昨年からは西洋諸国への関心を高めている。

 上院情報特別委員会で民主党の代表を務めるバージニア州のマーク・ワーナー上院議員は、「イランは今、ロシアの作戦を真似している」と言う。9月5日には、フェイスブック、グーグル、ツイッターの代表が、ソーシャルメディアにおける偽の政治情報への対応策について同委員会で証言する予定となっている。

 ファイア・アイは、Liberty Front Pressについて「反サウジ、反イスラエル、パレスティナ支持」といったイランの政治的指向や、米・イラン間の核交渉への支持を推進することを目的としたとみられる、工作活動の一つだとしている。

 ドナルド・トランプ大統領は、今年初めに、アメリカの核合意からの撤退を決めた。

 同団体は、アメリカの中間選挙には影響を及ぼそうとしていないようだが、ファイア・アイは分析の結果「そのような試みが出てくることを否定はできない」と言う。同社はLiberty Front Pressに関与している人物をソーシャルメディア上で特定したが、そのうち複数人が、バーニー・サンダース上院議員を支持するリベラル派のアメリカ人活動家を装っていた。また、ある人物は、ツイッターで「@berniecratss」というハンドルネームを使い、「場所」をアメリカ合衆国と表示していたが、電話番号はイランの国コードである+98から始まっていた。

 同団体は活動の一環として、「大量の反トランプ記事の発信」を行っていたが、ファイア・アイは報告書で「活動はアメリカの利用者、アメリカの政治以外にも広く広がっている」と述べている。
 
 2つ目の組織もまた複数のアカウントを開設しており、1万5千人のフォロワーを獲得していた。この組織は「Liberty Front Press」と関連があり、他人のアカウントをハッキングしてマルウェア(訳注: 不正かつ有害に動作させる意図で作成された悪意のあるソフトウェアや悪質なコードの総称)を拡散しようとしていた。フェイスブックはこの行為を防いだとしている。

 3つ目の組織もイラン以外の国で工作活動を行っており、81万3千人余りのフォロワーを集め、中東、イギリス、アメリカの政治に関する記事をシェアしていた。

 これらイランの団体は、広告費として合計1万2千米ドルを投入し、28種のイベントを主催した。

 4つ目の団体は、シリア及びウクライナの政治に影響を及ぼそうと試みていた。この団体は、米国政府が以前、ロシア軍情報局と特定したとFacebookが述べるソースと繋がりがあった。
 
 フェイスブックはブログに、「本件の調査のため、アメリカの警察と緊密に連携する」と投稿した。
 
 フェイスブックは7月末にも、32件の偽アカウントと思われるアカウントをフェイスブックとインスタグラムから削除。フォロワー数は合計で30万人にのぼり、数千人が偽アカウントの宣伝するイベントに関心を示していた。

By RYAN NAKASHIMA, AP Technology Writer
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP