マイクロソフトのGitHub買収 オープンソース界の懸念、MSは「執事」となれるか?
IT業界大手のマイクロソフトがソースコード共有サービスを運営するGitHubを買収した。かつてのマイクロソフトは、GitHubに代表されるソースコードの知的財産権をシェアするビジネスモデルには懐疑的であった。そのため今回の買収は、同社がかつての方針を転換する契機になるのかも知れない。
◆買収後、株価上昇
マイクロソフトは4日、GitHubを75億ドル(約8,200億円)で買収することを発表した。この買収に関しては先週から話題となっており、買収が報じられた直後にはマイクロソフトの株価は1.27%上昇し、先週と比べると3%上昇した。同社が発表した声明によると、GitHubの買収は数年前から交渉しており、昨年時点では50億ドルで買収するという話であった。
今回の買収について、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏は「マイクロソフトは開発者ファーストの企業であり、GitHubのちからが加わることで開発の自由、オープン性、そしてイノベーションといったわたしたちのコミットメントを強化するのです」「わたしたちは今回の買収合意によって生じるコミュニティに対する責任を認識しており、すべての開発者が作り、刷新し、そして世界でもっとも差し迫った挑戦を解決することを後押しすることに全力を尽くします」という声明を発表している。
◆買収劇の背景
フォーチュン誌は今回の買収の背景をさぐる記事の中で、GitHubに代表されるソースコードをシェアするオープンソースビジネスに関して、自社製品の知的財産権に依存したビジネスを展開していたかつてのマイクロソフトは懐疑的であり、脅威にすら感じていた、と指摘する。しかし、近年サティア・ナデラ氏が同社のCEOに就任すると、同社はオープンソースビジネスを取り入れるようになった。こうしたなか、同社の主力製品であるWindows OSがオープンソース化するという噂もたった。
対してGitHubは、ソフトウェア開発者のコミュニティにおいて中心的なサービスであったものも、近年財政面とリーダーシップに関して問題を抱えていた。とくにリーダーシップに関しては、2016年からCEOが不在となり、2017年8月からは新CEOとなる人材を募集していたのだ。ちなみに、前CEOはセクハラ問題の責任を問われ、同社を離れている。
◆GitHubは独立性を維持?
テック系ニュースサイト『The Verge』はマイクロソフトとGitHubコミュニティの関係に焦点を当てる。Githubコミュニティに属する開発者たちからは、かつてのマイクロソフトが知的財産権を乱用していたことから今回の買収に関する懸念が表明されている。こうした懸念をふまえて、マイクロソフトが開発者の信頼を得るためには、ちょうどゲーム「マインクラフト」を開発するMojangに独立性を認めたように、GitHubにも独立性を認める必要がある、と同記事は主張している。
GitHubコミュニティについては、同社CEOのナデラ氏は「わたしたちはGitHubコミュニティの執事となることを約束し、開発者のエトスを忘れずに独立性を尊重してGitHubを運営し、オープンなプラットフォームであることも維持します。また、わたしたちはつねに開発者からのフィードバックに耳を傾け、GitHubの基礎と将来性の両方に投資します」と述べている。